高齢化社会を迎えて、骨関節の加齢変化を基盤とした変形性関節症(osteoarthritis:OA)は確実に増加し、整形外科診療におけるは最も多い疾患である。OA疾患の好発部位である膝関節撮影は、膝関節人工関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)の経過観察の撮影を加えると増加傾向にある。撮影技師は、変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:KOA)の病態解剖を理解し、病態に適切した撮影肢位とX線解剖について熟知が必要となる。KOAによる関節軟骨の退行変性は加齢だけでなく機械的負荷などで変性が進行する。KOAの初期症状での画像読影は軟骨変性から始まり、軟骨の代謝障害から繊維化や亀裂により薄くなり、関節間隙の狭小化像を呈する。その後、滑膜・関節炎から軟骨が骨変化(骨棘・骨嚢包)し骨棘などの進行期の画像を呈する(図.1)。そのためKOAの関節軟骨の変性や関節間隙を評価するには、臥位画像でなく立位(荷重)撮影による荷重画像が有用となる(図.2)。立位(荷重)撮影はKOAの画像診断だけでなく、保存療法や手術治療の術後評価する画像となる。
図.1 関節軟骨の退行変性 図.2 撮影体位で変わる関節裂隙
KOAの基本撮影となる膝関節3方向(臥位)では、3次元投影による画像解剖や読影用語を解説する(図.3)。KOAの病期の進行分類には、Kellgren-Lawrence分類が一般的である(図.4)。その分類の読影keywordとして、「関節裂隙の狭小化」、「軟骨下骨の硬化」、「骨棘」、「骨嚢包」、「関節面不適合」、「遊離体」などがある。
図.3 KOA患者の臨床画像(臥位) 図.4 KOAのKellgren-Lawrenceの病期分類
KOA患者の末期における手術治療には、膝関節人工関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)がある。TKAの術前、術後撮影だけでなく定期的な術後の経過観察を行う画像として再現性のある撮影技術が求められる。そのTKA撮影は、インプラントや関節の状態だけでなく骨変化を描出する必要がある(図.5)。
立位撮影の荷重による下肢長尺撮影は、下肢アライメントの変形による下肢機能を評価するため計測法がある。その計測は下肢機能軸(Mikulicz線)を計測するが、施設により計測法の差異がある。そのため撮影技師は、依頼医師と計測法などを再確認し、撮影肢位なども検討する必要がある(図.6)。
(図.5)TKA撮影の正面・側面像のX線評価 (図.6)下肢長尺撮影(立位荷重)によるX線計測
OA疾患の末期患者は、人工膝関節置換術(TKA)手術を年間8万件(2011年)と急増し、TKAの術前と術後撮影が多くなった。TKAの術後評価には、術前・術後の下肢長尺撮影によりMikulicz線を計測し、下肢機能軸の改善を評価する(図.7)。
(図.7)下肢長尺撮影による術後評価
今回の講演では、KOAにおける読影と荷重撮影でのX線計測を踏まえた撮影について解説する。