肝胆膵の画像読影 RTレポート   安田鋭介(大垣市民病院)

 厚生労働省では,「チーム医療」を推進する観点から「医師及び医療関係職と事務職員との間等での役割分担の推進について」(平成19年12月28日付け医政発第1228001号厚生労働省医政局長通知)を発出し,各医療機関の実情に応じた適切な役割分担を推進するよう周知するとともに,平成21年8月から「チーム医療の推進に関する検討会」を開催し,日本の実情に即した医療スタッフの協働・連携の在り方等について検討を重ね,平成22年3月19日に報告書「チーム医療の推進について」を取りまとめた.平成22年4月30日医政発0430第1号厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」では,各医療スタッフの専門性を十分に活用して,患者や家族とともに質の高い医療を実現するためには,各医療スタッフがチームとして目的と情報を共有した上で,医師などによる包括的な指示を活用し,各医療スタッフの専門性に積極的に委ねるとともに,医療スタッフ間の連携・補完を一層すすめることが重要としており,診療放射線技師では,@画像診断における読影の補助を行うこと.A放射線検査等に関する説明・相談を行うこと.の2点が挙げられ,診療放射線技師の積極的な参加が求められています.

 当院では,私が就職した昭和52年4月の時点で「画像読影」が撮影技師の仕事の一部として日常診療の中に組み込まれ,技師の作成した報告書が臨床医の診療に活用されていました.検査項目は,技師が実施した「食道造影,胃透視造影,注腸造影,低緊張性十二指腸造影,小腸造影,点滴静注胆嚢・胆管造影そして排泄性尿路造影検査など」消化器領域の造影検査を主体に行われていました.その後,報告書を作成する検査項目には「シンチグラム,CT検査,超音波検査(心エコー,腹部,体表,造影エコー),MRI検査など」が加わり,最近では「PET/CT」の報告書も作成し,現在では放射線科医や専門医が読影する前の「一次読影」として定着しています.今回は,当院で作成している腹部超音波検査のレポートを例に挙げて,上下腹部における代表的な疾患の画像を供覧し,撮影部位とその疾患に特徴的な画像所見について臨床医に伝わりやすい「表現」と「コツ」を中心に解説いたしました.次に,肝臓の悪性疾患である「肝細胞癌」の画像診断について,肝癌診療マニュアル(社団法人日本肝臓学会,医学書院,20073月)にある多血性と乏血性肝内結節の診断アルゴリズムを解説し,当院で行われている実際を紹介しました.

当院では,1年間に約80例の肝細胞癌が新しく発見され,それらの成因を最近の10年間と(20002009年:N863),それ以前(19901999年:N=797)の症例で比べると,C型肝炎ウィルスは72.270.8%にやや減少,B型肝炎ウィルスは15.615.8%と不変,NBNC肝炎ウィルスは10.913.4%と上昇し,B+C型肝炎ウィルスが1.41.3%と不変でした.また,年齢の中央値を比べると6469歳と5歳の高齢化がみられます.肝細胞癌の画像診断法には,DynamicMRIと造影エコーが多用されています.DynamicMRIは,EOB・プリモビスト®注シリンジ(一般名:ガドキセト酸ナトリウム,略号:Gd-EOB-DTPA)が用いられ,これは常磁性体であるガドリニウムイオン(Gd3+)とEOB-DTPAとのキレート化合物で,キレートには脂溶性側鎖であるエトキシベンジル基が導入され,ガドリニウムイオン(Gd3+)により, T1強調画像における信号増強効果を示します.また,肝細胞特異性を有する唯一のMRI用肝臓造影剤で静脈内へ投与後,血管内および細胞間隙に非特異的に分布したのち,肝細胞内に特異的に取り込まれ,T1強調画像の信号増強効果を示します.つまり,EOBによるDynamicMRIでは1回の静脈内投与で,肝腫瘍の血流評価と肝細胞機能の評価が可能になります.(図1)

EOB 肝細胞癌.JPG

(図1 EOBによるDynamicMRI:中分化型肝細胞癌 )

一方 造影エコーとは,生体内に照射された超音波パルスに歪が生じると,エコー信号に送信波には含まれなかった高調波(Harmonics)成分が観察されます.これを分離して映像化するものが非線形信号映像法(non linear ultrasound imaging)と呼ばれる手法で,通常のBモード像に比べて方位分解能とコントラスト分解能に優れる特徴を持ちます.さらに,これらはTissue harmonic imaging(THI)Contrast harmonic imaging(CHI)に分けられ,前者が生体内部における超音波の非線形伝搬により発生するハーモニック成分を検出して,造影剤を用いないで生体組織を描出する方法で,後者が超音波造影剤(微小気泡)からの散乱信号に含まれる高調波成分を検出して映像化する方法です.超音波造影剤は,ソナゾイド(一般名:ペルフルブタンMB)2ml注射用水にて再懸濁0.015ml/kg(60kg:0.9ml)し,静脈内投与します.造影エコーの役割は,肝内結節の質的診断として血管相早期と後期,後血管相の造影パターンより肝内結節内の血流動態の把握(図2),TACE(肝動脈塞栓術)やRFA(ラジオ波焼灼療法),PEIT(経皮的エタノール注入療法)施行後,治療部の効果判定,超音波造影剤がクッパー細胞に特異的に取り込まれる性質を利用し,後血管相で肝内結節を欠損像として検出,そして治療効果不十分な部分を造影超音波で濃染し、超音波ガイド下選択的追加治療のアシスト(治療支援)です.

(図2 造影エコー像:中分化型肝細胞癌と肝血管腫)

このように,最近の肝細胞癌の画像診断は,「EOBDynamicMRI」でスクリーニング(肝内結節の血流の多寡+肝細胞造影相)を行い,肝内結節を検出すれば「ソナゾイド−造影エコー」で,その結節の動脈(腫瘍血管)と門脈血流を評価して,肝生検で分化度を確認してから治療するのが一般的です.

読影レポートは,検査で得た画像所見を正確に伝える報告書で,常に「目的を達成しているか?」「新しい発見はないか?」を念頭に行う姿勢が必要です.私たちは,チーム医療のスタッフとして目的と情報を共有できる症例検討会へ積極的に参加し,確定診断の得られた各症例から学ぶ画像所見を自らの報告書へフィードバックすることで読影精度はさらに向上します.臨床サイドとのcommunicationを継続することで医師との信頼関係が出来上がり,これは同時に診療支援体制の充実につながることを強調しました.