当院におけるWSの使用状況 〜2機種の使い分けの検討〜

北海道社会事業協会帯広病院

堀内 努

 

現在、当院でCTの画像処理に使用している2機種(Virtual Place:AZE製、ZIO STATION:ZIO製)について、比較しながら使用方法を紹介する。

2機種間の比較は、当院での使用状況下における比較であって、装置そのものの性能評価ではない。したがって、最新の情報を報告するものはない。

 

【脳血管】

脳血管の処理において、subtractionは欠かせない処理である。骨に接した部分(内頚動脈など)を3Dで描出するには、この方法を避けることは出来ない。

Virtual Placeでは、血管のみのマスクと骨・脳実質のマスクに分けられる。それに対してZIO STATIONでは、血管・脳実質と骨のみに分けられる。このことで、Virtual Placeでは比較的細くCT値の低い血管は脳実質と共にsubtractionされ、消失してしまう恐れがある。このことは、診断に影響してくる可能性もある。

subtractionの性能を比較しても、ZIO STATIONの方が詳細に機能している印象がある。しかし、設定によっては改善される可能性もある。

以上の結果より、脳血管CTAの処理の際には、ZIO STATIONを使用することが望ましいと言える。

 

【腹部血管】

腹部の血管において、両者共きれいなVR画像が作成されるが、細い血管を詳細に観察すると、連続性や表面の滑らかさにおいて、Virtual Placeの方が優れている(オパシティーは同様)。

Virtual Placeは、同時に多目的の作業が行え、またfusion画像は元画像から直接開く必要がなく、それまでに行った作業を繰り返さなくても良いという利点を持っている。

例えば、動脈相と門脈相をそれぞれ別々に3D処理したとしても、その作業途中のデータをそのままfusionに使用できる。ZIO STATIONの場合は、fusion機能でそれぞれの元画像から再度作業をすることになる。二度手間を避ける意味では、virtual Placeの使用が望ましいと言える。

Dフィルター機能は、積極的に使用する機能ではないが、時には必要不可欠な機能とも言える。この機能に関しては、ZIO STATIONの方が利用価値があると言える。

これらのことから、両者を臨機応変に使い分けることが必要と判断する。

 

【乳房】

乳房の処理における2機種の操作性の差はほとんどなく、どちらも使用している。どちらかと言うと、ROIを設定する際に曲線を描けるVirtual Placeを使用する方が若干多い。

その程度の使い分けなので、ここでは省略する。

 

【冠動脈】

この専用機能はVirtual Placeにしか搭載されていないので、ここでは比較ではなく、使用法のみを紹介する。

特別な処理をしているわけではないが、基本的な処理の他に重宝している機能、そしてちょっとしたこだわりについて紹介する。

冠動脈専用の処理機能を使っても自動描出できなかった血管、その表面の削れた部分については、3D機能をリンクして使用することで修復できる。

ここまでの作業で診断可能であるが、僅かな表面のザラ付きなどの調整をするというこだわりが、画像の美しさを変化させる。診断に役立つ画像を提出することは当然であるが、そこから先に進むことが職人としての力量だと言える。

 

【下肢動脈】

一般的な下肢のCTAは動脈、骨、軟部などのCT値の違いを利用することで骨陰影を削除している。

しかし、この処理は術者による再現性の違い、骨に接した血管の削除、微細石灰化の削除などの問題を抱えている。

そこで我々の施設では単純、造影両者を撮影してサブトラクションを利用している。当然この方法で問題となるのが被曝である。しかしこの検査を受ける患者のほとんどが高齢者である、そして単純撮影の撮影条件は造影撮影のそれの三分の一に押さえている、これらの理由から検査で得られる情報を重要視している。

この方法をとることで、広範囲に散在する石灰化を詳細に削除することが可能で、しかもステント内の血管の詳細な情報を容易に得ることが出来る。

この処理はサブトラクションを利用するので、ZIO STATIONを使用している。

 

 

【まとめ】

1、   良い3D画像を作成するには、ワークステーションの処理能力だけに注目してはいけない。良い3D画像を作成するには、良い元画像を得ることが必要不可欠である。画像を作成する際には、検査全体を見渡して細心の注意と努力を怠ってはいけない。

2、   今回の内容で2機種を比較しているが、どちらも出来ない処理はない。効率に差はあっても処理自体に差はなく、使い方次第でどんな処理も出来る。装置の性能に甘えていると装置に使われる恐れがある。装置の性能、使い方を熟知して使いこなす努力が必要である。

3、   検査の目的を見失っては、きれいな3D画像に仕上がっても意味がない。目的は病変の発見、そして診断なのだから、最後まで目的をしっかりと念頭に置くことが大切である。そのためにも、医師とのコミュニケーションは大切である。何を知りたいのかを明確にする。

4、   3Dの処理をするからには、しっかりとした拘りを持つことが大切である。自分で「ちょっとやり過ぎかな?」と思うくらいが丁度良い。常にそれくらいの気持ちで処理を行う事が重要。