骨撮影法と画像読影「椎体・胸郭・頭蓋骨」

(医)社団久和会立花病院 矢野雅昭

整形外科領域においての骨撮影法について、椎体・胸郭・頭蓋骨の基準撮影法を検討整理しながら、骨折や変性疾患の症例を提示しその画像を読影した上から、患者さんにとって有益な撮影法は、また優しい撮影法はどのような条件を持ったものなのかを考えてみたいと思います。

現在あるX線撮影法や骨撮影技術本は教科書を含めて数多くの書籍がみられます。これらの多くの書籍の撮影法は、撮影術者が“透視の眼”を持っていて、なおかつ“被写体は健康な成人”であります。“病変を写し出す撮影法”とは言い難い撮影法も少し見受けられます。だけども私たち診療放射線技師は、これらの書籍を参考にして撮影法や撮影技術を習得してきたのではないでしょうか。“撮影法は技師の数だけある。”といわれます。診療放射線技師各人は、患者さんに最も適した撮影法を駆使してその患者さんにとって最も有益であろう画像を提供しているものと考えております。その為には、“骨の正常解剖の熟知”は勿論のこと、“症例読影”が非常に重要となってきます。症例を読影理解することにより、基準となる正側2方向だけでは描出しきれない事例を、より適切な追加撮影法で患者さんにより有益な画像を提出することが私たち放射線技師の命題とも言えます。

 

 

 

また、私たちの研修会ETRTでは、画像を提供する立場である診療放射線技師としてのテーマとして「RTs 3S」を掲げてあり、“Smartに患者さんと接し、Skillの高い患者さんにとって有益な画像を、Speedyな小さな検査時間で画像を提出することが使命である。”と唱ってあります。このことをも頭に置きながらテーマとして与えられた骨撮影法を見ていきたいと思います。

骨折を診るのか?変性疾患を診るのか?スポーツ障害を診るのか? で撮影法もおのずと変わってくることは勿論、それぞれの検査目的に合わせた撮影法があるのではと考えております。

今回は「骨折を診る」を主眼に置き、無理な撮影体位を患者さんに強いることなく有益な画像が提出できる撮影法をとりあげるとともに“放射するX線を利用しての影絵作り”を実践することとしたいと思っております。

 

 

「症例を知る。マンガ本に親しむように読む!」

症例を知らなきゃ情報の多い良い写真は撮れません。

 

肩鎖関節および肩関節3方向

患者観察をしながら、検査内容や撮影の仕方などを説明する。撮影順位なども考える。

肩周辺の患者情報を素早く第1番に求めるには、まずは最初に、肩関節Y字像を求める。この理由は、この肩関節Y字像からは、鎖骨、肩甲骨、上腕骨近位部の骨折や肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼など肩関節周辺の情報がこの1枚の画像から観察読影することができ非常に重要な画像である。

 

   

 

胸骨2方向

胸骨骨折を疑った時は、正確な胸骨側面像が要求される。撮影法と順位を考えてみると、まずは正確な側面像が得られる工夫をする。患者さんが一番安定する動かない座位か立位を選択。まず撮影条件を整える。次に胸鎖関節下端点と剣状突起を触知しその中央の胸骨中心に管球高さを合わせる。カセッテ中央に必要最小限の照射野を設定する。設定された管球―カセッテ―照射野のラインの中へ胸骨側面を位置させる。この時、側面整位は胸骨前縁で合わせるのがコツ。動いてないことを確認後、X線を照射し撮影する。

次に斜入正面撮影。撮影条件を設定する。側面撮影の管球高さで撮影距離を70cm程度とり、カセッテに左から30°斜入させる。照射野を適切に設定し、胸骨を正面位でカセッテ中央に密着させる。動きが無いことを確認後、X線を照射し撮影する。この胸骨斜入正面写真が必要かどうかは議論の分かれるところである。

 

 

肋骨3方向

肋骨骨折が疑われ、その上に気胸なども疑われた時は、仰臥位撮影よりも立位か座位撮影を選択するべきである。撮影条件を整えて、骨折が疑われる2〜3横指上部を中心に管球高さを合わせる。軽く呼吸停止させて撮影する。大きな呼吸運動はなるべく避けることとする。最初に撮影された画像を読影し、患者さんの負担を極力小さくした必要な追加撮影の立位胸部撮影や肺CTの準備をおこなう。

 

腰椎6方向

基準撮影:正側2方向・両斜位・前後屈機能撮影

変性疾患(特に腰椎分離症やすべり症など)の診断には基準撮影となる正確な正側2方向が重要。

斜位撮影法。ブッキーテーブル上に仰臥位とし、X線入射点とするヤコビー線を触知確認する。LAOの場合、左前45°斜位にすることで移動する椎体中心を先に2横指左側へ位置させておく。体全体を斜めに起こしてきて、腰椎から仙椎までの椎間関節が直線的に描出されるよう、体上部は50°、体下部は45°の“雑巾絞り様ねじり”体位とする。

 

 

骨盤正面

ブッキーテーブル上に仰臥位とし、第2第3指で大腿骨大転子を触知する。第1指を伸展させた位置が大腿骨骨頭。1横指上のラインを骨盤中心とする(恥骨結合を触らない)。動きの無いことを確認しX線爆射する。

 

 

頭蓋骨2方向・頬骨弓軸位

仰臥位。カセッテとリスホルムブレンデをテープで固定し、センターリングと照射野を設定する。正面位は、頭蓋骨が左右の傾きが無いように眉間と鼻尖を直線上に合わせ、内耳道が眼窩中央に位置するようOMラインにX線中心を合わせた撮影位をとる。

側面像は、正面位を保持したままで、水平X線を利用して撮影する。

頬骨弓軸位像は、仰臥位で軽く顎を挙上するだけの撮影位で軸位像が得られる(頬骨弓術中撮影位)。

 

 

常々「診療放射線技師は技術者だ」と考えております。撮影したX線写真に責任がもてるよう、1つ1つの画像にチェックポイントを持って「骨撮影、上手(うまい)ね」って言われる技師をめざして頑張ってください。 

 

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