「解剖学;骨格筋について」

岐阜医療科学大学 教授 市川 秀男

 

講演内容の概要

生命は、35億年前、地球上に生きることを可能にし、3億年前には、海から陸へと進化した。そこには、肺臓、腎臓等の獲得と伴に、骨格筋の発達がなければ有り得ない事である。特に、人類は、約500万年前直立二足歩行を獲得(脊椎の2箇所;頸椎と腰椎のS字弯曲、腰の骨格筋の発達)これにより、手の開放、橈骨の弯曲により手首の回旋が可能になり、その結果、大脳を発達させ、道具を作り、上手に使えるようになった。

放射線技師は、骨だけで満足せず、運動器の骨格筋のスバラシイ役割を理解しチーム医療に役立てたいものである。

今回は特に、上肢と下肢の骨格筋の役割(運動メカニズム)として、骨格筋の付着部(起点、終点)と主な作用について以下の如く述べた。

 

【上肢領域】

T肩関節 1)挙上、外転(腕は、どうして上に挙げることができるのでしょうか?⇒それは、棘上筋、三角筋の働きによるものである。)2)内転、降下は、大胸筋、広背筋、小円筋、大円筋の働き。3)内旋は、肩甲下筋、大円筋の働き。4)外旋は、棘下筋、小円筋の働き。U肘関節 1)屈曲は、上腕二頭筋、鳥口腕筋、腕橈骨筋の働き。2)伸展は、上腕三頭筋の働き。V前腕 1)回内は、円回内筋の働き。2)回外は、円回外筋の働き。

W手関節 1)屈曲は、橈骨手根筋、長掌筋、尺側手根屈筋の働き。2)伸展は、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋の働き。X指 1)屈曲は、浅指屈筋、長母指屈筋、深指屈筋の働き。2)伸展は、総指伸筋の働き。(図−1,2)

 

 

【下肢領域】

T股関節 1)屈曲(大腿は、どうして挙げることができるのでしょうか?⇒それは、大腰筋、腸骨筋の働きによるものである。)2)伸展は、大殿筋の働き。3)外転は、中殿筋、小殿筋の働き。4)内転は、恥骨筋、薄筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、外閉鎖筋の働き。5)外旋は、梨状筋、上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、大腿方形筋の働き。

U膝関節 1)屈曲は、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋の働き。2)伸展は、大腿筋膜張筋、縫工筋、大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋)の働き。V足関節 1)背屈は、前脛骨筋の働き。2)底屈は、腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長・短腓骨筋等の働き。W足趾 1)屈曲は、長趾屈筋、長母趾屈筋の働き。2)伸展は、長趾伸筋、長母趾伸筋の働きである。(図−3,4)

 

 

尚 説明に、試作骨格筋の模型を作り、デシタルビデオでも分り易く追加し、述べた。

(豆知識)1)上肢(腕)は、地球の引力に逆らって、物を持ち挙げる為に、一般に“力コブ”と呼ばれる屈筋である上腕二頭筋が発達した。一方、下肢では、敵から逃げる為にすばやく足を前に挙げる、“太モモ”と呼ばれる伸筋である大腿四頭筋とさらに、地表を力強く蹴る“ふくらはぎ”と呼ばれる下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋)が発達した。

2)骨格筋は、バネの如く伸び、縮みし、骨の前面、後面又は、内側、外側等に対に付着し、屈曲、伸展、外転、内転、内旋、外旋と相反する働きをする仕組みになっている。

帆舟に例えるとロープのようなもので、帆舟は、支柱の帆の張り具合をロープで調整することで風の受け具合を変え、右、左や前に走行する事が出来る。これは、力学の法則、

てこの原理を利用している。私達は、このロープがどのように繋がっているのか、どのように作用調整しているのか理解したいものである。

 

HOME