どんどん使おう教科書技術本に載ってない大切な骨撮影法
-裂離骨折を読む-
(医)社団久和会立花病院 矢野雅昭
「患者さんにとって有益な診断画像を提出すること」を診療放射線技師の役目とした時、何を考え、何をしなければいけないのか?
整形外科分野における骨一般撮影を考えてみると、特に、高い撮影技術レベルで診断に最適な画像を、小さな検査時間で作り出すことが重要だと考えます。またちょっとした工夫をすることで“患者さんに優しい撮影法”を見つけ出すこともできるのではないでしょうか。
今回は過去の技師会学術大会などで紹介された撮影法をもう一度見直しそれぞれを再評価し、“最適な撮影法として普及させたい”と考えている撮影法を紹介したいと思います。と同時に、“骨折を見逃さない”という観点から画像読影の重要性を示したいと思います。
@ 患者さんに優しい頬骨弓軸位撮影法(自然位仰臥位の術中撮影法で)
体位・入射点:テーブル上に自然な仰臥位。正中で軽く顎を挙げOMラインを50°前後傾ける。カセッテを70°で受ける。
頬骨弓に直交するように管球角度20°前後でX線入射する。術中撮影要領とする。
A 患者さんに優しい踵骨軸位水平X線撮影法(踵骨側面撮影後にそのままの体位で)
体位・入射点:踵骨側面撮影の後、そのままの状態から写真のような体位を作る。
撮影距離は100cm以上とし、踵骨―フィルム間に20cm程度のグレーデルテクニックを用いる。撮影条件は管電圧60kVくらいで適切な濃度が得られる照射量とする。
入射点は、内果下端と舟状骨粗面を触知しラインを作り、そのラインに平行で、2cm足底寄りに直交入射する。
B 橈骨頭頸部斜入像撮影法:グリンスパン氏撮影法(橈骨頭頸部骨折を疑っての追加撮影法)
橈骨頭頸部に骨折を疑ったとき、難しい体勢の回内回外斜位撮影でなく、橈骨頭頸部側面像から尺骨鈎状突起との重複を避けるように橈骨頭頸部に向けて45°で斜入撮影する。橈骨頭頸部が詳細かつ有益な斜位像として描出される。
C 足関節側面外内撮影法
足関節内果をカセッテに付けた自然な側臥位でX線は外果から内果に入射する。距骨滑車面を一枚に描出でき、簡単に足関節を広く正確に表現できる。経過観察などに有用である。
D 腰椎側面仰臥位クロステーブル撮影法{高齢者に非常に安定した楽な撮影体位}
ブッキーテーブル端に背板を用いカセッテグリッドを垂直に保持する。患者さんは正面撮影後仰臥位のままで側面像を撮影する。
高齢者に非常に安定した楽な撮影体位であり、体動が無く撮影時間を長く撮ることができる。
仰臥位クロステーブル撮影法での腰椎側面像 CASE 1.2.3.4
・・・アンケート{腰椎撮影を考える}・・・立位PAと立位Latが基準撮影法である!
E 腰椎正面像を後前PAポジションで撮影する。
腰椎疾患の多い部位のL4/5/Sの椎間腔を正確に描出するには、後前PA方向撮影をするしか無い。これが正面像!
立位では、自然な状態(病態)の荷重脊椎を忠実に現わす。
立位後前PA方向撮影での腰椎正面像 CASE 5.6.7.8
―裂離骨折と剥離骨折を読む―
裂離骨折(avulsion fracture)とは、筋・腱・靱帯などの牽引力によって、その付着部の骨が引き裂かれて骨折するものを言う。
同意語で使われる剥離骨折の定義は、筋・腱・靱帯などの牽引力が働かず、直達外力によって発生する骨折を言う。例えばトンカチなどで指を打ってしまったときに発生する骨折を言う。
上腕骨大結節:棘上筋付着部 肘頭:上腕三頭筋付着部 上腕骨外顆 前腕伸筋付着部
末節骨基部:伸筋腱付着部 中節骨基部:屈筋腱付着部 下前腸骨棘:大腿直筋付着部 大腿骨大転子:中殿筋付着部
脛骨平面前区:前十字靱帯付着部 脛骨平面後区:後十字靱帯付着部 脛骨内果遠位端:側副靭帯付着部
腓骨外果遠位端:側副靭帯付着部 踵骨踵隆部:下腿三頭筋付着部 第5中足骨基部:短腓骨筋付着部
最後に、これらの大切な撮影法を理解し利用することは、患者さんに無理な姿勢や体位などを強要することなく、“患者さんの症状を裏付けた有益な画像”を描出することができ、X-CTやMRIで安直に答えを求める追加撮影をしなくてもすむように単純撮影の技術レベルを高く持ち、また基本となる正側2方向撮影に追加した“最適診断画像が描出できる撮影法”を熟知すべきではないだろうか。考えてみたい。
撮影現場でこのように重要な意味をもつこれらの大切な撮影法を教科書や撮影法、技術本に掲載されることを強く望むと共に、初めて眼にされた方々は一度チャレンジして欲しい。