骨盤骨折を読む

                                      奈良県立医科大学附属病院 中央放射線部 安藤 英次

 

急医療では、primary surveyの初期診断にX線撮影が重要な役割を果たしている。特にhigh energy traumaとして交通外傷、転落と墜落による骨盤損傷は、「骨盤X線画像」による骨折の有無が治療を進めるうえで重要な画像診断となる。その骨盤骨折は、全骨折の5-8%を占めるが、その骨折線は消化管ガスなどで読影が容易でない画像である。

今回の講演内容としては、(Fig.1)に示す骨盤構造の機能と骨盤骨折の]線画像解剖を紹介する。その骨盤は下肢からの力を受け止めるだけの構造機能でなく、腹部臓器を守る機能として「骨盤綸」がある。「骨盤綸」は、(Fig.1-a)に示す仙骨と寛骨(腸骨+恥骨+恥骨)からなる環状構造が荷重伝達機能で、骨盤骨折により、その構造が破綻すると骨折だけでなく腹部臓器や血管損傷などの合併損傷に関与する。また、寛骨臼の骨折は「骨盤輪」だけでなく、(Fig.1-b)に示すように腸骨稜から恥骨結合に至る弓状線が柱状に支える「前柱」と、仙腸関節から坐骨結節まで至る「後柱」があり臼蓋部を囲むように骨盤構造を支えている。これらの「前柱と後柱」の機能構造を臼蓋骨折により破綻すること、股関節の機能関与することから術式だけでなく術後の歩行障害などの後遺症に影響する。

  

 

 

骨盤骨折の]線撮影するうえで、その骨折治療を進めるための骨折分類は多くの書籍に紹介されているが、その分類には、(Fig.2)に示す「骨盤輪」が破綻していない「安定型」と靱帯損傷を合併する「不安定型」の分類がある。その「不安定型」骨折では、骨盤内血管損傷から「出血性ショック」や、「後腹膜血腫」、骨盤内の「臓器損傷」などの合併損傷を伴うことがあるため「骨盤輪」の破綻が重要な読影ポイントになる。

骨盤骨折の分類           (fig。2)

 

骨盤骨折に含まれる寛骨骨折とは、乗車中の交通事故で、膝がダッシュボードに打ちつけられ膝関節骨折と股関節脱臼が発症するだけでなく、骨盤の寛骨臼を骨折する「dashboard injury」がある。その「dashboard injury」には、(Fig.3)に示すように後方脱臼と後方脱臼骨折、中心性脱臼骨折の3つの脱臼がある。

骨盤骨折は、「骨盤綸」と「前柱と後柱」の機能解剖を理解した投影法を選択することが撮影ポイントなり読影につながると考える。

最後に骨盤骨折について「骨盤骨折の読む」という演題であるが、骨盤の機能解剖、骨盤画像解剖を踏まえた骨折分類と骨盤骨折の手術式に有用な]線撮影法とCT画像の投影法を紹介する。