ルーティンを考える ―CTからみた胸部単純写真―

              清水赤十字病院 中川 英之 

 

私が放射線技師になった頃、“胸部写真に始まり胸部写真に終わる”と言われたものである。技師になって2ヶ月あまり、撮影室に一人で入るようになったが、そこに何が写っているのか、はっきりと理解できないまま撮影することに追われていた。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


少しずつ画像を理解することが出来るようになってくると様々な発見があり、同時に不安を覚えてきた。気軽に撮影している胸部単純写真であるが、その重要性を知るにつれ、この写真はこれで良いのか?ここに走っているラインは何だろうと思いを馳せた。

そして現代、胸部単純写真はデジタル化され、CTMRIなど多くのモダリティがあり、胸部単純写真は、その立ち位置を変えては来ているが、今でも最も多く撮影されている事に変わりは無い。そして若い医師、技師にとっては、CT画像の方が馴染みやすく胸部単純撮影の方が馴染まなくなってきているのかも知れない。

そこで今回は、胸部単純写真を理解するうえで、単純撮影だけで理解するのではなく、CT画像から胸部単純写真を理解できるようにしてみようと思う。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


胸部単純写真を理解する上で大切なことは奥行きを理解することである。当然のことながら、人体は奥行きを持った構造体であり、平面状に投影された画像から、その構造を想像できる力が必要となってくる。そのために必要な基礎的な解剖学、病態による変化など多くのことが必要となってくるが、それらを理解した上で、さらに単純写真からCT画像を、CT画像から単純写真をというイマジネーションが出来れば、読影する能力が上がってくる。もちろんそれは、ただ単純写真に必要とされることばかりではなく、3D画像を作成する時などでも十分に活かされる能力になると思われる。

今回の『ルーティンを考える』はCTからみた胸部単純写真と題して、胸部写真の読影力向上にスポットを当て、胸部単純写真を紐解きながら、一人でも多くの方に理解しやすいように、また一人でも多くの方が、読影に興味を持っていただけるように願う。