脊椎疾患について

愛媛十全医療学院附属病院 上田剛史

はじめに

脊椎疾患において、複数の椎間に圧迫病変がある場合は責任病巣を画像所見だけでは同定できない症例が多数あります。脊椎疾患を理解し、検査で得られる情報や手術方法を把握し、診断や手術に有効な画像を描出するために脊椎疾患についてまとめたので紹介します。

当院で平成21年に施行された手術は419例で、そのうち83例が脊椎疾患でした。当院で手術の適応となっている脊椎疾患について紹介します。



頚部脊椎症(頚椎症)・頚椎症性脊髄症(頚髄症)

頚部脊椎症は頚椎の椎間板や椎体・椎間関節・靭帯などが加齢に伴って変性や変形することにより、脊柱管や椎間孔が狭くなる状態です。その結果、右の画像のように硬膜管が圧迫されて脊髄症状が出るものを頚椎症性脊髄症といいます。

 

後縦靱帯骨化症

後縦靭帯骨化症です。後縦靭帯は脊椎の椎体後縁に沿って縦走する靭帯です。これが肥厚後、骨化し硬膜管を圧迫する病気が後縦靭帯骨化症(OPLL)です。骨化は頚椎に多くみられ、まれに胸椎にもみられます。


 


 

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは、硬膜管が腫瘍以外で周辺の骨性あるいは軟部組織性の変性により絞扼され、脊髄馬尾神経と神経根の障害を生じている状態です。

神経がしめつけられた状態が続くと血行障害が生じて症状が出現すると考えられています。

 硬膜管を圧迫する一つに黄色靭帯の骨化があります、黄色靭帯は脊柱管の後壁にあり、椎弓間を連結しています。これが骨化したときを黄色靭帯骨化症といい、胸腰椎移行部に好発します。右下の画像では、椎間関節の変形により脊柱管が狭くなっているのがわかります。

 

腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状は間欠性跛行です。間欠性跛行は、しばらく歩くと足のしびれや痛みのため、思うように歩けなくなり、休むと再び歩けるようになることをいいます。

 

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアです。椎間板は外側の丈夫で柔軟性がある線維輪という部分と、その内側にあるゼラチン状の髄核と呼ばれる部分で構成されています。

椎間板ヘルニアとは、線維輪に亀裂が生じ、髄核が線維輪を破って脊柱管や椎間孔に脱出した状態を言います。髄核が線維輪を破っていない状態は椎間板ヘルニアには含まず突出や膨隆と表現しています。画像では、脱出した髄核により神経根が圧迫されています。

 

髄核が脱出した位置により,内側性ヘルニアと外側性ヘルニアに分類されます。

内側性ヘルニアは @中心性 A傍中心性があり、硬膜管を圧迫します。

外側性ヘルニアは @椎間孔内A椎間孔外に分類され神経根を圧迫します。

外側性ヘルニアは硬膜管を圧迫していないため、MRIやミエロCTでも描出が難しく、横断像は椎間間隙に沿った画像が必要とされます。


 

 


脊椎分離症

脊椎分離症は腰椎の椎弓の上関節突起と下関節突起を連結した部分が断裂した状態で、主に第4腰椎と第5腰椎に起こります。分離した腰椎と、その上の腰椎の連結がなくなって不安定になり、周辺の靭帯や筋肉に負担がかかります。脊椎分離症のCTでは、椎弓に沿ったスライスにより分離部が広く描出されます。

 

脊椎すべり症

脊椎すべり症は脊椎分離症に伴って起こる分離すべり症と、分離に伴わない変性すべり症とに分けられます。脊椎の関節が骨折して分離すると、もともと脊椎が前方に弯曲していることから、骨折した脊椎の一部が前方へ動いて、ずれることがあります。この様なものを分離すべり症といいます。まれに、分離していなくてもすべり症が起こることがあり、これは椎間板の変性が原因なので変性すべり症と呼ばれます。


 


当院では、これらの脊椎疾患に対し手術による治療を検討する際にはミエログラフィーとMRIの両方をおこなっています。ミエログラフィーでは、脊髄腔を穿刺の際に髄液を採取します。

 

髄液検査

髄液の機能は、栄養を補給し老廃物を排除する働きと、脳や神経を保護する役目があります。そのため脊髄や脳に病気や異常があると、髄液に変化がみられます。この髄液を採取し病気の診断、治療を判定するのが髄液検査です。

 

ミエログラフィー

ミエログラフィーは造影剤の副作用や脊髄腔を穿刺するという侵襲があるため最近は施行されることは減る傾向にあるようです。

 

腰椎穿刺は棘突起と棘突起の間から行います。脊髄は第1〜第2腰椎の高さで終わり馬の尻尾のようにたくさんの神経へと枝分かれした馬尾神経に移行するので、第2腰椎以下で穿刺針を刺入すれば脊髄を損傷することはありません。背中をできるだけ丸めるのは刺入部である棘突起間と椎弓間を広げるためです。

 腰部脊柱管狭窄症の主な原因は黄色靭帯の肥厚・骨化、椎間関節の変形、椎間板の膨隆による脊柱管の圧迫です。例えば、立位で後屈させると、椎弓と椎弓を結ぶ黄色靭帯がたわみ硬膜管を圧迫します。前屈すると黄色靭帯は緊張するため、圧迫の程度がゆるくなります。また、腰椎のすべりがあり不安定な場合は脊椎が前方に弯曲していることから、前屈することにより脊柱管が狭くなります。これらのことから、ミエログラフィーで前屈・後屈させる理由は、運動時の硬膜管の圧迫状態を把握するためです。



 


MRIでミエログラフィーの代用ができるようになりしたが、腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などに多い、硬膜管や神経根の圧迫の描出はミエログラフィーほど、明瞭ではありません。硬膜管や神経根に対する圧迫の状態を描出する手段として、ミエログラフィーは、なお第1選択の形態学的な補助診断法と考えられています。また、ミエログラフィー後のCT検査では、脊柱管の形態や硬膜管・神経根との相互関係を観察する時にも、描出力が優れている面が多く認められています。

 

手術後の画像から脊柱管の除圧を確認します。


片開き式脊柱管拡大術

適応疾患:頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症などによる広範囲の圧迫には、後方からの除圧手術が選択されます。

 

手術方法:@棘突起と椎弓を切離し、 A椎弓をドアのように開き徐圧します。 B開いた椎弓の隙間に棘突起を設置し、固定しています。

 

 

 


頚椎前方固定術

適応疾患:頚椎後縦靭帯骨化症、頚椎椎間板ヘルニアなどの病変が限局的な場合には、

前方からの手術が選択されます。

手術方法:@線維輪・髄核・終板軟骨・椎体の一部を除去し A病巣を摘出し除圧します。 

B椎体間に採骨した骨を移植します。 C不随意運動がある場合はプレートで固定します。

 

腰椎椎間板ヘルニア後方摘出術(Love法)

手術方法:@椎弓の一部と黄色靭帯を切除し A脊髄神経を圧迫しているヘルニアを摘出します。

 

腰椎椎弓切除術(開窓術)

適応疾患:腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなど症状に応じて必要な部分だけを切除する方法です。

手術方法:@椎弓・椎間関節の一部を切除します。傍脊柱筋と連結している棘突起は切除せず、後方の支持組織を温存します。 A黄色靭帯を切除し、脊柱管の圧迫を徐圧します。

 

腰椎椎弓形成術

適応疾患:腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどによる広範囲の圧迫を徐圧する方法です。

手術方法:@棘突起を縦に割り筋肉と棘突起の付着を分離することなく展開し、 A椎弓・椎間関節の一部を切除します B黄色靭帯を切除し、脊柱管の圧迫を徐圧します。 C棘突起を縫い合わることにより後方の支持組織を温存します。

 

腰椎後方椎体間固定術(PLIF

適応疾患:腰椎変性すべり症、分離すべり症など、徐圧と固定を行います。

手術方法:@棘突起の一部と椎弓の一部を切除し、A左右の椎弓根から椎体にスクリューを挿入します。 B椎間板を切除し、 C椎間間隙に採骨した骨を入れたケージを設置し、前方へのすべりを抑制します。 Dスクリューをロッドで固定し後方の支持組織を補助します。


椎弓根に挿入するスクリューの幅は約6mmです。椎弓根の幅や挿入する角度を確認できるよう、術前のCTでは側弯がある場合でも、左右の椎弓根を椎体に沿って描出する必要があります。

 


まとめ

脊椎疾患を理解し、無駄な検査にならないよう、責任病巣同定のため、また手術に有効な画像の描出を目的とした検査を行う必要があります。

手術後は脊柱管の後方の支持等、不安定な部分に注意して撮影したいものです。また、形態的な変化があるため、手術方法も理解しておくべきではないでしょうか。