当院における肝臓ダイナミックCT撮影の検討
済生会西条病院 中央画像センター 和田 彬
CT造影理論を書かれた市川先生の講演や著書で言われている肝臓ダイナミックCTの条件にあてはめて比較検討しました。特に、注入時間固定法、大動脈のCT値300HU以上で肝実質のCT値の上昇値が20HU以下という動脈優位相の条件に当てはめた時当院がどれだけ理論値に近づけているのか検討しました。
l 使用機器・・・Light Speed VCT(64列) GE社製
l インジェクター・・・デュアルショット GX 根本杏林堂
l 造影剤…300mgI 100mlシリンジ,370mgI 100mlシリンジ
造影剤量は体重当たり500mgIになるように決定し、30秒間で造影剤が注入できるように注入速度を決定しています。45kg以下の低体重の患者さんは注入速度2.5ml/s、注入量75mlの固定で撮影しています。
ROIは画面上で1p2の円状で統一しました。大動脈のCT値は腹腔動脈分岐の大動脈、肝実質はU−portion(門脈臍部)の見える同一スライスでそれを囲むように3か所CT値を測定して、その値を平均して値を出しています。
注入時間固定法の検討のために各撮影開始時間のCT値の平均をとりグラフにしました。大動脈、肝実質の平均TDCは動脈相で多少の違いはありますがほぼ同じグラフが描かれていました。
グラフの上が最大値、下が最小値、真ん中が平均値を表しています。とてもばらつきが大きいですが、各撮影開始時間の平均をとると約300HU前後になっていました。その中でCT値300HUを越える割合は、35秒後、38秒後の割合は57%、40秒後は36%でした。結果は満足のいくものではありませんでした。
38秒後撮影開始の300mgI、370mgI 使用時の注入速度、注入量、体重、ヨード量に分けた散布図を示します。
ヨード量をみると500mgI/kgのあたりにあるにもかかわらずCT値300HU未満のものが約半数存在しています。他の項目をみてもまんべんなく300HU未満のものが存在して特異的に落ち込んでいる部分は見られませんでした。撮影開始時間を固定しているので患者状態の補正はできていません。そのことによる個人差がでたのではないかと思います。
やはり撮影開始時間が早いので35秒後が他と比較して66%で圧倒的によい結果が得られました。しかし、視覚的に評価すると門脈の染まりが弱く動脈相早期の画像に近いものが少なくなかったと思います。
1p2のROIなので血管や腫瘍などCT値の高いものをひろってしまっているかもしれません。
よって、10HU以下は染まっていないものとして、誤差を考えて前後10HUづつ、10HU〜30HUで検討してみました。
今回肝硬変や脂肪肝など疾患をもっている人すべてを対象としているため個人差が顕著にでていたと思います。全体的に症例数も少ないので正確な検討とは言いにくいのですが、大きく外すようなTDCはほとんどありませんでした。
大動脈のCT値300HUを超える割合は約60%ですが38秒後が適していました。
大動脈のCT値300HUを超えるための対策として初回に限りボーラストラッキング法を行い、その患者さんの最適撮影開始時間を見つけて次回からは固定撮影開始時間で検査することで個人差を少なくできると考えました。しかし、撮影する技師による個人差、撮影タイミングの失敗によるリスクが高いので統一することは難しいと思います。そこでCT値300HUを超えるために全体的にヨード量の底上げをしてあげることよいのではないかと考えました。撮影方法はいままでとかわらないのでリスクも少なく技師間の差もなく条件を満たせると思います。しかし、ヨード量を増やすと造影剤量が足りないので高容量の使用が必要になってきます。ヨード量や注入量が増えると造影剤じん症などの副作用の問題出てくるので、除脂肪体重など他の注入量決定法も検討しながらどの造影剤を導入するのか、もし高容量を使用する場合、ヨード量をどの程度あげればいいのかは今後の検討課題としたいと思います。