肝区域・画像診断革命
 今より50年程前、フランスの医師、クイノ−氏は肝臓を8っの区域に区分することを発表した。その20年後、スペインの二人の医師が大学での講義用として、より解り易い区域図を考案し、現在に至っている。しかし何れも、摘出肝の観察でのスケッチである為、CT、USから得られる生体内での肝臓の座標との間にパラドックスが生じている。何故この様なパラドックスが生じるのか、その原因について述べる。
( 歴史裏話 )
 肝区域の発案者はスエ−デンの医師であったが、あまり知られることなく、その10年後、フランスのクイノ−医師が世に広めてゆくことになる。しかし、アメリカの医師は、近年まで、それを認めようとはしなかった。従って、肝区域の定義は、今だ国際的に統一されておらず、様々な課題が残ったままとなっているのが現状である。



couind08.jpg  摘出した肝臓を板の上に置き、背面から見た図である。クイノ−氏は門脈の支配域に従って八つの区域に分別した。
 勿論、この頃はCT,USのような画像診断機器は無く、肝臓の区域又は、亜区域切除術の確立が目的であった。

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 その約20年後、スペインの二人の医師が大学での講義用として、直感的に理解できる肝区域図を考案した。しかし、摘出肝をモデルとしている為、やはり生体内での肝臓の座標とは異なって描かれている。

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 これらは、CT,USにおける区域読影の為の代表的な図であるが、いずれも40年前の区域図とは大同小異で、そのパラドックスが解決されていない為に、CT,USでの区域決定を混乱させている。以下、その原因について考察する。

seg0823.jpg  まず、左葉外側区のパラドックスについて述べる。摘出した肝臓による区域図である為、生体内での肝臓との座標軸が45度ほど足方へ回転しており、左葉外側区のS2とS3が上下に描かれている。

ctus123.jpg  しかし、CT、US何れにおいてもS2とS3は後と前に現れる。つまり、上下区ではなく、正しくは左葉外側後区と左葉外側前区となる。 

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 従って、左葉外側区は左の図のようになる。




seg0814.jpg  もう一点は、尾状葉(S1)であるが、本来、尾状葉はS7及び、S8と連続しており、左図における表現は適切ではない。 

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 CT,USにて認められるS1(尾状葉)はS7,S8と連続する。

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 左図の様に修正することで、CT,USでの肝区域決定を容易にすることが出来る。

couind01.jpg  ま と め
 CT,US読影において、S1は区域決定の重要な意味を持っている。つまり、S1(尾状葉)は肝門部より上方に存在し、肝門部と共に、右葉上下亜区域の境界の指標となっている。このことの応用例を、次章、クイックリファレンスにて述べる。


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