イレウスと画像診断

                         済生会西条病院 中央画像センター

木村 真一

はじめに

イレウスとは急性腹症の中で最も頻度が高い疾患である。そのイレウスについて調べたことを報告したいと思います。

 

概念

イレウスとは口から摂取した飲食物が何らかの原因により通過が障害された病態のことをいいます。

 

イレウスの分類

機械的イレウス

単純性イレウス(閉塞性イレウス) 

複雑性イレウス(絞扼性イレウス)

 

機能的イレウス

麻痺性イレウス 

痙攣性イレウス

イレウスは原因によって機械的イレウスと機能的イレウスに分類されます。

また細かく分けると上記のような四つに分類されます。

症状

イレウスになった患者さんの代表的な症状は、吐き気、嘔吐、腹痛、排ガス、排便の停止などがあります。症状が進行すると腸内容が進まず脱水症状になります。

絞扼性イレウスでは血流が途絶え腸管壊死や穿孔の危険も伴います。

また閉塞が改善されないと、溜まった腸内容の中の腸内細菌が増殖しそれと共に毒素が産出されます。その毒素が腹腔内や血中に移行することにより敗血症や敗血性ショックとなります。

診察では腹痛の始まった時間や痛み方、食事の内容や最後に排便した時間や腹部の手術の経験などを聞き、触診では圧通の場所等を探します。

 

 

 

検査

血液検査 

腹部単純撮影(立位、臥位)

腹部CT(造影)

腹部超音波検査 血液検査

 

血液検査では赤血球、白血球、ヘモグロビン、BUN、クレアチニン、CRPの六つを注意します。

赤血球、ヘモグロビン、BUN、クレアチニンは脱水があると高い値になります。

白血球やCRPは炎症や感染症、腫瘍などがあると高い値となります。

イレウスによる

腸炎があると白血球、CPRは高い値となります。

 

また血液尿素窒素(BUN)やクレアチニンは腎機能の指標となるため絞扼性イレウスを疑い造影検査を行うときは注意する必要があります。

 

腹部単純撮影(立位、臥位)

腹部単純撮影(立位)では腸管ガスが貯留しているかどうか、Niveau(鏡面現象)の有無や場所や形などを観察します。

イレウスになり腸内圧が亢進すると腸管壁の血管が圧迫され血行障害が起こり腸管は浮腫となり肥厚します。肥厚した腸管は腸液やガスの吸収ができなくなりNiveauとして観察できます。

Niveauのある位置ですが上部小腸(空調)の閉塞では上腹部に、下部小腸や大腸の閉塞では骨盤内で観察できます。

上部小腸(空腸)の閉塞では胃、十二指腸、空調の三箇所にニボーがみられることが多く、これをTriple bubble signと呼びます。それに対し下部小腸(空腸)の閉塞ではとぐろを巻いた小腸のあちらこちらにNiveauがアーチ上に形成されそれが階段のように映りこれをStep ladder appearanceといいます。

 

腹部単純撮影(臥位)では拡張した腸管の形や場所を観察します。

上部小腸(空腸)の閉塞では腸管が拡張し輪状ヒダがはっきりと写ります。これが魚のニシンのように写るのでこれをHerring bone appearanceといいます。(Herringとはドイツ語でニシンの意)それに対し下部小腸(空腸)ではこの所見(輪状ヒダ)は目立たなくなります。また結腸の場合ではHaustraが写りS状結腸の捻転で

はが写ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Coffee bean sign                          Step ladder appearance

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Herring bone appearance

 

 

腹部CT(造影)

腹部CTでは次の項目を中心に観察します。

腸管拡張の有無

腸管壁の肥厚の有無

イレウスの場所と原因を特定

他の疾患の有無

腸管の拡張は腸内容が留まっている事を示します。腸管が肥厚していることが確認できれば腸炎を診断することができます。

横断の他に矢状断や冠状断も再構成し、イレウスの場所や原因を探します。また他の疾患がないかどうかも見ておきます。

絞扼性イレウスを疑う場合には造影CTを行います。血流が途絶えているのを確認することはもちろんのこと、腸間膜や血管の走行も確認しておくことが大切である。

また肺野条件でfree airの観察も必須です。

 

腹部超音波検査

絞扼性イレウスと単純性イレウスの区別

 

 

腸管の蠕動運動の異常

腸管拡張の程度

 

腸内容の性状

・腹水の有無とその程度

 

 

イレウスを疑う患者さんではこのような項目を主に観察します。

 

絞扼性イレウスでは腸管の内容物は止まってみえます。が単純性イレウスでは腸が活発に動いているため腸の流れが観察できますが閉塞しているため腸内容は進行することが出来ず、腸中を行ったり来たりします。この流れをto and flowといいます。

 

腹部超音波検査の利点は放射線を使う検査に比べ、すぐに、いつでも、どこでも、被爆なく、リアルタイムで観察できることです。

腹部超音波検査は以上のような利点があるため患者さんに優しい検査といえます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


イレウスの治療は単純性イレウス、絞扼性イレウス、麻痺性イレウスの治療は大体同じです。

まず症状が軽い場合は点滴で様子を見ます。

 

嘔吐や腸管の吸収障害により水分や電解質の喪失が起こり、著しい脱水と電解質異常をきたすため初めに点滴を行います。

 

経鼻胃管は嘔吐物が胆汁性だったり、画像により上部小腸閉塞と考える場合は胃管で様子をみます。が改善しない場合は閉塞部位までイレウス管をいれます。

下部小腸と閉塞の時もイレウス管を入れます

 

 

胃や胆摘などの上腹部OPの場合は上部小腸の閉塞が多く経鼻胃管で改善するケースも多いが、虫垂や婦人科領域など下腹部のOP場合は下部小腸が骨盤内で癒着を起こしイレウス管になることが多いようです。

絞扼性イレウスでは大半が緊急OPの適応となります。絞扼しているところを早く解除し血流を回復させます。腸管の壊死した部分は切除します。

 

 

まとめ

・イレウスは画像によって得られる情報が多い疾患である

・イレウスは原因や分類によって治療法が変わる

・急性腹症の中では頻度の高い疾患であるため特徴を理解しておく必要がある

イレウスは一般撮影、腹部CT、腹部超音波検査など画像によって得られる情報が多い疾患であるため、診断能の高い画像を早く作成しないといけない。

イレウスは急性腹症のなかでは最も頻度が高い疾患である。その特徴を理解し、画像のサインを見逃さない目をつけることが大切である。

 

 

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