32列MDCTと64列MDCTの冠動脈CTA
済生会西條病院 中央画像センター 黒河寛之
当院が32列MDCTから64列MDCTにバージョンアップして、従来のretro
spective gating scanによる撮影に加え、prospective gating scanと寝台移動を繰り返して心臓全体を撮影するSnap
Shot Pulse(SSP法)による撮影も可能になりました。今回は32列MDCTと64列MDCTの冠動脈CTAの比較を行いたいと思います。
まず、当院で作成しているルーチン画像を示します。
当院では、Volume
Rendering、Angiographic view、CPR、Lumen view、MPRの5種類の画像で診断を行っています。また、この画像の他にも撮影した範囲の肺野や縦隔の病変の有無もチェックしています。
次に、冠動脈CTA撮影法ですが、32列MDCTの時はRetro
spective gating scanのみで撮影を行っていましたが、64列MDCTになってからは従来のRetro spective gating scanに加え、Conventional
Scanと寝台移動を繰り返して撮影を行う
Snap Shot
Pulse(SSP法)で撮影を行えるようになりました。
SSP法の特徴として、長所と短所は…
が、あります。
次は、今まで当院で撮影した冠動脈CTAを32列MDCT(Retro
spective gating scan法)と64列MDCT(Retro spective gating scan法)と64列MDCT(SSP法)の3群に分け画像の視覚評価をおこないました。評価の区分は下に示すとおりです。
64列Retro spective gating scan法 64列 SSP法
32列MDCTで Retro spective gating scan法で撮影した群は優が50%でした。不可の理由は多数の不整脈や息止め不良があげられます。不整脈除去ソフトが早く導入していればもう少し不可の割合を減少できていたと思います。
64列MDCTでRetro spective gating scan法で撮影した群の評価は良と可が50%ずつです。理由としては、現在64列MDCTでRetro
spective gating scan法で撮影する時はHRが65bpm以上の時なので、すべてRotation timeを0.35secで撮影を行っている当院では、時間分解能が悪くなってしまうためこのような評価になったと思います。
64列MDCTでSSP法で撮影した群の評価は、優が60%を占め、他の撮影方式の時より比較的良い画像が得られていることがわかります。バンディングアーチファクトの影響が少なくなれば、もっと比較的安定した画像が得られるようになると思います。
つづいて、同一人物における32列MDCT Retro spective
gating scan法と64列MDCT SSP法の画像の比較です。
まず、Volume Renderingによる比較ですが、全体的な画質そして#10の末梢血管の描出能が右画像(64列SSP法)の画像の方が良く描出されていることがわかります。
CPR画像は造影効果に多少の違いはありますが、左右あまり明確な画質の差はないと思います。しかし、同一位置における直行断面ですが、こちらは64列SSP法で撮影した画像の方が辺縁がシャープに見えます。Conventional
scanで撮影しているので原理的に辺縁がシャープになったのではないかと思います。
最後に、32列MDCT Retro spective gating scan法と64列MDCT SSP法で撮影した時のDLP値の比較です。
DLPとは設定した撮影条件、撮影範囲でのファントム中での吸収線量のことです。
管電流や撮影範囲など厳密には撮影条件の若干の違いはありますが、全ての場合において64列SSP法で撮影した方が平均で75%(MAX88%,Min62%)の被曝線量の低減がみられました。
結語として、
@ SSP法はRetro
spective gating scan法と比べ、検査前の心拍数と撮影中の心拍変動に制限があり使用が限られる。
A SSP法は被曝線量が当院においては、平均で約75%程度の低減が見込め、空間分解能の良い画像が得られるため当院でHSSP法の撮影を第1に考えている。
B 撮影後フィルター等を使用してきれいな画像を作るのではなく、検査時にいかにより良い基礎画像(HR50〜60)を得るかを第一に考えて検査をおこなっています。