ステントグラフト内挿術

松山市民病院放射線室 徳丸直起

当院の心臓血管外科では大動脈瘤の治療方法として従来の外科的手術に加え経カテーテル的に行うステントグラフト内挿術を行っています。本法は2002年に手技料が保険適用になったばかりで医療器具として認可がおりたのはステントのみでこれもごく最近です。

県内でも本法を行っている施設は少ないということで今日はこのステントグラフト内挿術の基礎的な部分について症例を交えてお話ししたいと思います。

 

これまで大動脈瘤の治療は外科手術を原則としてきが循環補助手段を要するなど手術侵襲が大きく適応の選択には制限がありました。

そこで最近ではステントグラフトを用いた経カテーテル的血管内治療であるステントグラフト内挿術が臨床導入され、従来の外科手術にみられる問題点を解決する低侵襲治療として期待されています。

大動脈瘤の外科手術は一般的に瘤のある部分を切除して人工血管に置換します。それをステントグラフト内挿術では、大腿動脈より挿入したシースカテーテルを経由してステントグラフトを動脈内に誘導しその上下端を動脈瘤の中枢側と末梢側の健常部位に拡張固定します。それによって瘤内血流を遮断して血栓閉塞を誘発し、瘤内の減圧と血行再建をおこないます。

 

 

これが実際のステントグラフトの写真です。自己拡張するZ型ステントに人工血管を縫いつけステントグラフトを作ります。ステントの端を露出したままのbared-stentというものもあります。これは瘤近傍に主要血管がある場合に閉塞させないようにするときなどに使用します。

 

作成したステントグラフトはプッシャーという棒を使ってシースというチューブの中に押しこみ先端まで移動させます。動脈瘤の位置まで到達したらプッシャーをステントグラフトにあて、シースを引いて留置します。

 

次にステントグラフト内挿術の流れを説明します。

DSA付き透視室において全身麻酔管理とします。

左右の上腕動脈を穿刺してシースをいれます。次に右の鼠径靱帯直下で切開を加えて大腿動脈を露出します。右上腕のシースより長いガイドワイヤーを挿入し大腿動脈まで誘導します。大腿動脈まで到達したらガイドワイヤーを捕捉し、これを外に引き出して貫通させます。左上腕のシースからは造影用のカテーテル挿入します。総大腿動脈を遮断したうえで切開して、あらかじめステントグラフトを格納しておいた運搬シースをガイドワイヤーの誘導下に挿入します。

運搬用シースを目的部位に誘導した後に、造影用カテーテルで造影して病変とステントグラフトの位置を確認して留置します。

 

 

次に本法の適応について話します。

ステントグラフトの確実な固定を得るためには、病変の中枢と末梢における健常動脈部位がそれぞれ20mm以上必要とし、使用するグラフトの口径は正常動脈径より10%20%程度大きく設定することが提唱されています。このことから、治療適応の決定には動脈病変および瘤の形態を含む解剖学的要素が大きく関連してきます。特に主要な分枝動脈が瘤病変近傍にある場合には、ステントグラフトによって閉塞する可能性があるため、その適応には限界があります。

また、18〜22Frのシースを使うため、大腿動脈の径がそれ以上なければなりません。

動脈瘤の形態的には3分枝より末梢の解離性動脈瘤、嚢状瘤、仮性動脈瘤が良い適応とされています。

 

 

症例

71歳男性。今年9月1日後腹膜腫瘤によるIVC圧迫、SPO2低下で内科受診。腫瘤の精査および肺梗塞疑いでCE−CTを行いました。腫瘤が大動脈瘤と診断され、心臓血管外科に紹介され、3日後の9月4日にステントグラフト内挿術を行いました。

ダイナミックCTにて造影早期では大動脈より連続するjet様の内部造影効果が見られ後期では内部は大動脈と同様に均一に造影されており動脈瘤の存在を考えます。また形状からは嚢状動脈瘤と考えられます。動脈瘤の長径は約7cmです。

   

 

術前の造影です。上腕より挿入したピッグテールより造影します。右の腎動脈下部よりjet様のflowが確認できます。

 

右上腕動脈よりガイドワイヤーを挿入し露出した大腿動脈部まで進めます。大腿動脈まで到達したらスネアワイヤーで捕捉して引き出します。

 

貫通させたワイヤーよりステントグラフトを格納したシースを誘導していき目的部位まで進めます。

   

 

プッシャーを押し当てゆっくりとシースを引いて瘤の位置でステントグラフトを拡張させます。

 

               

 

留置直後の造影です。少量のendoleakが確認できます

 

そこでバルーンを使ってステントグラフトを血管壁に圧着させます。

 

最後にもう一度確認の造影を行います。

先ほどのendoleakが消失しています。

 

翌日CE−CTにて確認を行いました。術前との比較です。

瘤内に明らかな血流はなく、上腸間膜動脈、両側腎動脈、下腸間膜動脈の描出も良好です。

3D−CTでみるとよく分かります。

 

        

 

 

以上よりステントグラフト内挿術の利点と欠点を並べてみました。一番の利点はやはりその低侵襲さであると言えます。外科的手術より時間も短縮でき輸血もほとんど必要ありません。

欠点としてはendoleak,,migration,脊髄虚血障害、動脈損傷血栓塞栓症、術後遠隔期の治療成績が不明なことがあげられます。

持続的なendoleakの場合にはステントグラフトの再挿入か外科手術の適応となります。

Migrationには留置の際に血圧の影響を受けるものなどがあり、術後のmigrationには大動脈口径に比べステントグラフトの径が不十分な場合や、固定部の径時的な拡大が考えられます。

また遠位下行大動脈には脊髄栄養血管に灌流する肋間動脈が多く分岐している可能性があり、これが閉塞されると対麻痺を生じてしまう危険がありますが、その発生頻度は低いとされています。

そのほかシースやワイヤーで動脈を傷つける可能性や血栓塞栓症の危険もあります。

また、臨床導入されて歴史が浅いので遠隔期の治療成績が不明であり、経過を追って、今後の課題とされています。

またステントグラフト自体はもちろんのこと、デリバリーシステム自体も完成したものとは言い難く、それぞれの施設で工夫をこらしながら、様々な方法を試みてるのが現状です。

 ステントグラフト内挿術は、デバイス、適応および手術手技、遠隔成績などいまだ問題を残しているが、手術侵襲の大きい疾患に対しては、より安全にかつ有効に行いえる術式になる可能性が示唆されてきました。

 

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