「骨基準撮影法と骨折疑いの追加撮影」
立花病院 矢野雅昭
整形外科骨撮影における基本となる基準撮影法について文献を参考にして再考してみる。 尚、今回は特に触知できる骨などの皮膚面を指標としてみた。
[T]上肢撮影:手関節・肘関節・肩関節
[U]下肢撮影:膝関節・足関節・踵骨および距踵関節
[T]上肢撮影:手関節・肘関節・肩関節
@「手関節」正面位・側面位
・ ・・正面位:座位にて、肩関節90°外転し、肘関節は90°屈曲位とする。
前腕は回内回外中間位。手関節は橈骨軸と第3中手骨が一直線となるよう橈尺
中間位。指は伸展。
中心線:橈骨尺骨茎状突起を結んだ線の中央(手関節皺半横指近位)に、垂直入射する。
X−P:橈骨尺骨と手根骨との関節間隙が正確に描出していること。
・ ・・側面位:座位。肘関節を90°屈曲し脇腹に付け、前腕を水平にすると共に掌面を垂直に
する。第1指はやや掌側外転し、第2指は橈骨軸に対して1横指回外伸展させる。橈骨尺骨を1つに重ねる。
中心線:橈骨茎状突起(手関節皺)半横指近位へ垂直入射する。
手背に適切な補助具を使用すればよい。
X−P:橈骨中央に尺骨が投影され、月状骨との関節間隙が正確に描出していること。
A「肘関節」正面位・側面位
・ ・・正面位:座位にて、上肢を掌面を上にして前方に挙上させ、肘関節を伸展、前腕を回外
させる。
中心線:尺骨頭を触り、フィルム中心1横指上に持っていく。橈側まがり皺の1横指遠位の腕橈関節に垂直入射する。
X−P:上腕骨正面像が描出され、肘関節間隙が広く、特に橈骨頭との間隙が正確に描出していること。
・ ・・側面位:座位にて、肩関節90°外転し、肘関節は90°屈曲位(上腕骨滑車面を同心円状
にするため)とする。上腕軸をフィルムと平行にし、前腕は掌面を垂直にする。
中心線:上腕骨外側上顆から橈骨より1横指遠位に垂直に入射する。
X−P:上腕骨滑車面が同心円状に投影され、関節間隙が正確に描出していること。
B「肩関節」正面(関節腔)位・Y字view・軸位
・ ・・正面(関節腔)位:立位にて、検側の肩をつけた10°〜30°(個体差)の斜位をとる。
肘関節は90°屈曲とし掌面は上向きにすると共に30°内旋させる。
中心線:上腕骨骨頭内側面に頭尾方向20°にて入射する。
X−P:肩甲骨関節窩の前後縁が一枚に重なり、上腕骨骨頭と分離し、肩峰は鎖骨に重なって投影される。上腕骨結節間溝が描出されていること。
・ ・・Y字view:立位にて、カセッテ面に対して向かって立ち、70°の角度にまで回旋する。
肩甲骨後縁(内側縁)を触知し、その肩甲骨後縁と上腕骨頭中央を直線的位置関係とする。
中心線:肩甲骨後縁(内側縁)の中央に頭尾方向20°(肩峰下腔描出)にて入射する。
X−P:肩甲骨外側縁の中に内側縁が重なって投影され、肩峰と烏口突起、肩甲上角が共に全体像としてY字形をなす。
・ ・・軸位:仰臥位にて、検側の上腕は掌面を上向きにして90°外転させ肘関節は90°屈曲し、
頭は反対側に曲げる。カセッテは肩の上縁に垂直に立て頸部に深く押し付ける。
中心線:腋下中央(上腕に対して開角50°)に鎖骨遠位端に向けて入射する。
X−P:上腕骨骨頭と肩甲骨との関節間隙が明瞭に描出され、肩峰、鎖骨が骨頭と重複す
る。
[U]下肢撮影:膝関節・足関節・踵骨および距踵関節
C「膝関節」正面位・側面位・skyline view
・ ・・正面位:座位にて、膝を軽く屈曲(大腿下腿骨開角160°)させ、補助具に乗せる。
膝蓋骨は大腿骨の中央に描出させること。
中心線:膝蓋骨尖部に垂直に入射する。
X−P:大腿骨の遠位端辺縁と脛骨の上関節面、顆間隆起とが重複せず、関節間隙が明瞭
に描出されること。特に脛骨内側関節面は一線となること。
・ ・・側面位:側臥位にて、検側下肢を下にして、膝関節を130°程度に軽く屈曲させる。
下腿脛骨軸をカセッテより5〜6°挙上させる。
中心線:膝蓋骨尖部と膝のくびれを結んだ線の中央(大腿骨内顆頭下端)やや後に、管球角
度を6°程度付けて尾頭方向に斜入する。これにより、大腿骨内外顆を正確に重複させることができる。
X−P:膝関節は130°屈曲された状態で描出され、大腿骨内外顆が1つに重複し、大腿脛骨間隙と大腿膝蓋関節が正確に分離していること。
・ ・・skyline view:仰臥位にて、足底を付けて膝を90〜110°屈曲させる。
カセッテは大腿骨上で膝蓋骨中央から約15cm程度の位置で立てて保持する。
中心線:脛骨粗面に15°の角度で入射する。
X−P:膝蓋骨軸位像が大腿骨滑車縁の窪みに描出されていて、内外両側関節面が均等に
投影されること。
D「足関節」正面位・側面位
・ ・・正面位:座位にて、足底を立て、踵骨第2指基準線を10°内旋させる
(内外果中央と第4指を直線で結ぶ)。
中心線:足関節内外果を結ぶ線の中央(腓骨外果遠位端1横指近位)に垂直に入射させる。
X−P:距腿関節間隙が明瞭に描出され、外内果が距骨と重複せず距腓距脛関節が正確に
観察されること。
・ ・・側面位:内果をフィルム面につけた脱力させた自然な側臥位(北九州臨床研究会法)をとる。
脛骨軸はフィルム面とほぼ平行とする。このことにより、距腿関節面がフィルム面と垂直になり関節間隙が正確に描出できる。
中心線:腓骨外果遠位端1横指近位に垂直に入射する。
X−P:距骨滑車表面が1枚に描出され、距骨中央に内外果が重複して投影される。
E「踵骨」側面位・軸位(水平X線)
・ ・・側面位:外果を下にした足関節側面撮影の体位。
中心線:脛骨内果遠位端延長線と足舟状骨後方延長線上との交点に垂直に入射する。
X−P:踵骨側面像が正確に投影され、距骨および立方骨との関節面が明瞭に描出。
・ ・・軸位(水平X線):10cm程度の発泡スチロールの台に、外果を下にした側面撮影の体位。
水平X線を利用し、エアーギャップ法にて撮影(踵骨―フィルム間距離は25cm)。
中心線:後距踵関節面にほぼ平行に入射する(第5中足骨近位端と脛骨内果1横指遠位端を通る線に入射する)。
X−P:踵骨全体がコントラスト良く描出。踵隆部、載距突起、中後距踵関節面が観察で
きる。
F「距踵関節」側面位(両側同時):半座位の体位で、両足底を合わせ、大腿を45°外転外旋さ
せる。足底両踵骨間は7〜8cm(4横指)の間隔とする (九州大学榊氏変法) 。
中心線:両踵骨間(両側内果端を通る線)の中央に頭尾方向に30°で入射する。
X−P:距踵関節側面像が両側同時に観察できる。
尚、骨折疑い時に追加して撮影する撮影法については次の機会に述べることとする。