「肝細胞癌を読む」
立花病院 矢野雅昭
今回の研修会においては、ヘリカルCT、MDCTの検査対象であり、造影方法で論議を醸している「肝細胞癌」をとりあげた。
ここでまず、肝細胞癌について少し知っておきたい。
簡単にまとめてみると、わが国の肝細胞癌は、@肝細胞癌患者が増え続けている A肝細胞癌はウイルス性慢性肝炎、肝硬変症、肝細胞癌という一連の疾患の最終像であること B他の癌とはまったく異なり、このなかから肝細胞癌が発生するというはっきりとしたハイリスクグループがあること、である。そして、肝細胞癌は多中心性発生し、多くは異時性に発生があることである。
@わが国のほとんどすべての肝細胞癌は、ウイルス性慢性肝炎→肝硬変症→肝細胞癌という一連の疾患の最終像である。従って、他の癌と異なり、はっきりとした high risk group がある。
A肝細胞癌の発生にB型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染が関与している。HCVの持続感染が75%に、HBVが20%にみられる。二重感染も少なくない。
BHCVの持続感染のほとんどは輸血(および医療行為)によると推測される(水平感染)。
HBV持続感染は母児間感染である(垂直感染)。HBVの成人期の新感染はHBVキャリアーにならない。HCVの母児間感染はほとんどない。
CHCVの感染力はHBVより低いが、いったん感染すると50%が持続感染
となる。一方、HBe抗原陽性の母親からの出生児のほぼ全例が感染し、その85%はHBVのキャリアーとなる。そして10%に慢性肝炎が発生する。
Dアルコールの多飲は肝細胞癌の発生を早めるので、一種のプロモータ(促進因子)ではないかと考えられている。
EB型肝炎感染(出生時)より約50年、C型肝炎感染より約25年を経て、肝硬変症(時に慢性肝炎)の一部から肝細胞癌が発生する。
F肝細胞癌の特徴は、多中心性発生である。径2p以下の小肝癌でも同時性(約30%)、あるいは異時性(5年でほぼ100%)に新たな病変が出現。
G癌組織の主な血流の流出路は、肝静脈ではなく門脈系である。特に被膜内外に門脈に連なる豊富な血管網をつくる。このため肝細胞癌は早期から経門脈的に進展する。
H肝細胞癌は血流を肝動脈から受けている。
I肝細胞癌は high risk group に対して、繰り返し検査を行うことにより早期に発見できる。
わが国における“肝細胞癌発生の自然史”を図に示す。
「肝細胞癌の特徴」と 「肝細胞癌のCT診断」
肝細胞癌の特徴としての形態は多様であり一般に肉眼分類は、@結節型 nodular A塊状型 massive Bびまん型 diffuse の3型に分類される。
一般に肝細胞癌は、他の肝腫瘍と同様に単純CT・造影CTでも肝実質に比べやや濃度は低い。
約90%の肝細胞癌はhypervascularである。(動脈〜毛細血管相の比較的均一な濃染像として現れる)
@ 結節型 nodular:周囲肝実質との境界が鮮明な結節状を呈するもの。
・ ・・肝硬変を高頻度に合併し、膨張成長する
CT診断・・・動脈相で比較的均一に濃染する。偽被膜は単純CTで低濃度輪状に認め、門脈相以降の遅い相によく造影効果を示す。
A 塊状型 massive:一葉全体、もしくはその大部分を占め、不規則に周囲肝実質に浸潤移行するもの。
・・・発育が早く、軟化・のう胞化・破裂しやすく、浸潤成長する。
CT診断・・・大きな塊状型では中心壊死や出血によると考えられる低濃度領域があり造影
効果は不均一で弱い。
B びまん型 diffuse:結合織に囲まれた無数の小腫瘍結節が肝全体に浸潤して肉眼上肝硬変との区別が困難なもの。
・・・合併する肝硬変が末期萎縮型で臨床的には肝硬変と変わらない。浸潤成長する。
CT診断・・・門脈・肝静脈浸潤が多いが診断は困難な場合が多い。
* 実際の症例では、この3型(中島分類)に当てはまらないものも少なくない。
「症例1」
US画像 CECT
「症例2」
S2HCC A phase P phase
E phase
患者情報:身長165cm/体重52kg BSA:1,47 脈拍数:84 脈圧:22
造影方法:造影剤 volume 90ml flow rate 2,5ml/sec
scan times:17sec delay time:1st 33sec :2nd 40sec :3rd 73sec