「胸部単純写真を読む」

愛媛県立新居浜病院 原 正和

 

1. 存在診断

胸部単純写真の読影において第一の目的は「異常の検出と局在診断」にある。

病気が何かという前に、まず見つけることが大事で「見逃してしまっては何にもならないということ」すなわち「存在診断」のできる能力がもっとも必要である。以下「存在診断」に必要な読影テクニックについて述べる。

 

(1)正常解剖の理解

正常を知らなければ何が異常なのかわからない。異常陰影を見つけるためには、まず正常X線解剖について理解し、正常像を読影できる能力を身に付ける。

スライド1 正常胸部X線像

 

(2)シルエットサイン

シルエットサインとは、X線の物理的透過性に基づく理論的読影法であり胸部正面像において病変の局在を診断するための重要なサインである。存在診断において異常陰影を見落とさないために読影テクニックとして習熟する必要がある。

スライド2 シルエットサイン

 

スライド3 症例 シルエットサイン+(中葉症候群)

右心(第2弓)のシルエットが消失している。これにより病変が心臓に接している肺区域(S5)にあると読影できる。

 

スライド4 症例 シルエットサイン−(気管支拡張症)

左下葉広範囲に嚢胞性病変を認める。左心縁は明瞭(シルエットサイン−)であり

病変が心臓の背側(S9.S10)にあると読影できる。

 

2. 質的診断

質的診断いわゆる「病名を当てる」には、多くの医学的知識や経験と患者の医原情報が必要であるが、形態的な分類により鑑別疾患を挙げることは可能である。

スライド5 症例 (右下葉肺癌、肺門縦隔リンパ節転移)

右下葉(S9,S10)に存在する腫瘤と肺門縦隔へと上方に連続する腫瘤より肺癌のリンパ節転移が疑われる。

以下略

 

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