当施設におけるVirtual Colonographyの取り組みと症例
松山市民病院放射線室
○松田 洋美 鈴木 えみ 清水 みき
松本 悟 徳丸 直起 藤原 正志
●背景
Virtual Colonographyは、1994年Viningらによって最初に報告されて以来、欧米においてはCTによる大腸癌のスクリーニングの結果が報告されている。
本邦においては、その病変検出能の低さや粗大な画像から、臨床利用の機会は乏しかったが、multidetector-row CT(MDCT)の開発に加え、ハード、ソフトウェアの改善によるスキャンの高速化、診断能、画質の向上により、その有用性が報告されるようになった。しかし、その適応においては未だ検討段階である。
当施設において、この度、導入されたMDCT-GE Lightspeed Ultra16が、平成14年10月9日により稼働し始め、新たな取り組みとしてVirtual Colonography(以下VCと略す)を施行した。
●対象
病変部の内視鏡の通過が不可能であった大腸癌患者を対象に、病変部より口側の検索を目的としてVCを施行した。
●撮像条件
機種:GE Lightspeed Ultra16
スキャン時間/1回転:0.5sec
検出器の構成:0.625×16列
ピッチ:1.375
処理:Advantage Workstation ver.4.0Performance
撮影範囲:上下腹部、仰臥位/腹臥位の2方向
撮影時間:約13〜15秒
*管電圧、管電流は各症例に併記する。
●読影の仕方
1、 自動腸管展開図を作成する。
2、 内腔像を作成する。
3、 上記1,2及び仰臥位、腹臥位のaxial像を参照してスクリ−ニングをする。
●機種の特徴
Light Speed Ultra16 Technology
・ Long length
・ High resolution
・ Micro voxel imaging
・ Short breath hold
・ Low Dose
<<症例1>>
87歳、女性(管電圧:120kV 管電流:120mA)
腹部CTにてS状結腸に腫瘤像を認めたため、大腸内視鏡検査を施行した。S状結腸に2´の進行癌を認め内視鏡の通過が不可能であったため、内視鏡検査直後にMDCTを施行し、病変部より口側のスクリ−ニングを試みた。
<CT画像> <注腸X線検査>
<大腸内視鏡検査>
<MDCT画像>
Air structure 病変部の口側
横行結腸のポリープ
横行結腸の憩室
[結果]
横行結腸に5mm大のポリープと2mm大の憩室が描出された。しかし、注腸X線検査で認めた下行結腸に多発する憩室がほとんど描出されていなかった。これは残存したBa 造影剤、洗浄液、腸液が3次元再構成の際に憩室を隠したためと思われた。
<<症例2>>
65歳、男性(管電圧:120kV 管電流:120mA 検出器の構成:1.25×16列)
便潜血陽性のため大腸内視鏡検査を施行した。S状結腸に2´の進行癌を認め、それより口側への内視鏡の通過が不可能であった。病変部および、その口側の検索を目的として術前に、MDCTを施行した。
<CT画像>
<注腸X線検査>
<大腸内視鏡検査>
<MDCT画像>
Air structure apple coreサイン
主病変の肛門側のポリープ @ A
(*@、Aは同じ病変を示す)
下行結腸のポリープ
[結果]
下行結腸にポリープ、主病変の肛門側にポリープが描出された。しかし、前処置が不十分で腸管内溶液が大量に残り、また空気量が不足したため全体的に描出は不良であった。
<<症例3>>
44歳、男性(管電圧:120kV 管電流:400 mA )
腹部CT検査で肝臓に多数に腫瘤があり肝転移を疑った。便潜血陽性があり、大腸内視鏡検査を施行した。S状結腸に2´の進行癌を認め、病変部の口側への内視鏡が通過不可能であった。この検査時に、直腸に1´の進行癌とポリープも併せて指摘された。大腸内視鏡検査直後にMDCTを施行した。
<注腸X線検査>
<大腸内視鏡検査>
<MDCT画像>
S状結腸の2´の進行癌 直腸のポリープ
直腸の1´の進行癌 @ A
(*@、Aは同じ病変を示す)
横行結腸の小ポリープ
[結果]
この症例は、上行結腸から盲腸にかけては、腸液の残存が多量のため評価不能となった。その他は、横行結腸やや脾弯曲部寄りに小ポリープが描出された。MDCTに於いては大腸内視鏡所見と同様にS状結腸後壁に2´の進行癌、直腸に1´の進行癌とポリープが描出された。
●結語
Virtual Colonographyは大腸内視鏡の通過不可能な大腸癌患者の症例に対して、病変部より口側の検索に有用と考えられた。
MDCTによるVCは、注腸X線検査とは異なり体位変換をしなくても仰臥位/腹臥位各々のCT撮影を行うだけでよく、体位変換のできない患者や高齢者に適した検査と言える。MDCTの高速性も患者負担の低減化につながる。
現在のところ、大腸内視鏡直後に施行するのが最も行いやすいと考えている。今後の課題として、前処置についてはさらに検討が必要と思われる。