「診療放射線技師になって半年 心がけていること」
医療法人社団久和会立花病院川端勇介
私が立花病院に入職したときに、最初に技師長に言われたことがある。それは、
診療放射線技師は一般社会人であるということ、診療放射線技師は患者様を相手にする医療人であるということ、それから、「まずは私の行動をそのままコピーしてください」ということであった。
最初に教わったことは、患者様の立場に立って考えるということである。皆さんは、食事に行くとき、お酒を飲みに行くとき、どのようななお店がいいだろうか。ほとんどの人は、オシャレできれいなお店、料理がおいしいお店、楽しいお店という風に回答するだろう。また、体調が悪いとき、怪我をしたとき、どんな病院に行くだろうか。当然のことながら、清潔な病院、信頼できる病院、従業員がいつも笑顔で優しく接してくれる病院に行くだろう。患者様には医療機関を選ぶ権利があるのである。患者様は身体的、精神的に多くの不安を持っている。その不安な気持ちを少しでも和らげてあげるためには、より良い患者接遇が必要である。常に笑顔を絶やさないこと、患者様と同じ目線に立つこと、礼儀正しく、優しい言葉遣いをすること、患者様の気持ちに気持ちで応えること・・医療は接客業、水商売である。
放射線科に照射録が来たらまずイメージをする。例えば飲食店で料理を作るとき、使用する材料、使用する調理器具、調理手順などをあらかじめ確認し、料理を始めるのだと思う。同様に病院で写真を撮影するときにも、IPのサイズ、撮影条件、ポジショニング、X線入射センターなどをあらかじめイメージして撮影を始めなければならない。そして、患者様が撮影室に入る前に撮影準備を整えておくことも大切である。例えば飲食店では、テーブルを整理、整頓し、清潔に保っておくように、病院では撮影室を整理、整頓し、清潔に保っておかなければならない。これは、患者様(お客様)に不快感を与えないためである。また、患者様(お客様)を待たせないように、飲食店ではメニューや材料、調理器具、食器の準備をしておくように、病院では撮影条件の設定、管球(距離、照射野)、IPのセッティングを行っておくべきである。
患者様が検査室に入ったら、患者様に検査の説明をし、同時に患者様の状態を把握する。例えば飲食店では、どんな料理であり、どこで捕れた魚を使用しているのかということである。病院でも、どこの部位を何回撮影するのか、なぜ金属やプラスチックの付いた衣類、下着を外してもらうかということを説明し、患者様(お客様)の信頼を得られるようにしなければならない。また、飲食店で、お客様のお水は無くなってないか、おしぼりは汚れてないかと確認するように、病院でも、患者様の耳は遠くないか、呼吸停止は出来るか、一人で立っていられるかなど、患者様に気を配ることが大切である。
撮影順位も、患者様が一番楽に撮影できるようにすることが大切である。例えば、胸椎2R、腰椎2Rのオーダーが来た場合の撮影順位を考えてみたいと思う。胸椎A-P→胸椎Lateral→腰椎A-P→腰椎Lateralという順番で撮影した場合、患者様の体位変換は3回になる。しかし、胸椎A-P→腰椎A-P→腰椎Lateral →胸椎Lateralという順番で撮影すると、患者様の体位変換は1回ですむ。このように、患者様のことを一番に考えて撮影を行わなければならない。そして、患者様をしっかりと見て撮影するということである。飲食店では、料理はオーダー通りかと確認するように、動きは大丈夫か、呼吸は止まっているかとういことを確認し、患者様(お客様)を不安にさせないことが大切である。
最後に、自分の一連の行動を第三者の目から見て自己評価をする。常に笑顔でいられたか、言葉遣いはどうだったか、スムーズに撮影できたかということを再確認し、悪かった所の反省を行った。
そして、次に教わった大切なことは、正常解剖を理解してポジショニングをするということである。診療放射線技師の技術レベルの差によって起こる、診断能の低下による患者不利益があってはならない。X線写真は影絵である。すなわち、正常解剖をしっかりと理解していれば、影絵を見ながら正しいポジショニングができるのである。どの部位を撮影するにおいても、外部から見ることができる、あるいは触ることができる自分だけの基準点をみつけなさいと教わった。例えば、頚椎側面像であれば、外耳孔の1横指後ろにセンターを合わせる、腰椎正面像であれば Jacoby’s lineの3横指上にセンターを合わせるなどである。そして、ひとつひとつの写真に必ずチェックポイントを設け、確認を行った。(図1〜図4)
図1.頚椎の撮影基準点とチェックポイント 図2.腰椎の撮影基準点とチェックポイント
図3.肩関節の撮影基準点とチェックポイント 図4.膝関節の撮影基準点とチェックポイント
私が現在勉強している事は、撮影技術(体位・ポジショニング)および検査法、骨、臓器、脈管の正常解剖、構造物の理解、疾病の病理、病態、解剖名、疾病名の英語での理解である。