骨の解剖と生理

立花外科病院  伊藤 薫  

 

  診療放射線技師にとって骨とはきってもきれない存在である。今回はその骨について考えてみた。

 

  骨とは、

   高度に分化した結合組織の一つの形態で、少ない細胞成分と細胞より産生された豊富なコラーゲンとプロテオグリカンを主体にした細胞外基質と、これに沈着している骨塩(ミネラル)から成っている。

   人の骨格系は約200個の骨からなり、身体の支柱となり、また頭蓋腔、胸腔、骨盤腔などの体腔をつくり、臓器などの働きを助ける。したがって骨の成長が体格の重要な因子となる。

 

  骨の役割

1.    支持組織で人体の運動や形態の維持し、脳、脊髄、臓器などの保護をしている。

2.    体液平衡では、カルシウム、燐などの貯蔵や放出により細胞の調節を行う。

 その他、骨髄組織は血液産生の場としての働きをもっている。

 

  T.細胞と機能

   骨組織の形成吸収に関与する骨原性細胞すなわち骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞と十分に分化していない前駆細胞と線維芽細胞がある。

   骨芽細胞は若い骨組織や類骨組織の表面に一層に配列してみられる細胞で側方の細胞と密に接して配列する。なかでも、骨芽細胞は建設、骨細胞は保守、また破骨細胞は解体をそれぞれの役目をはたし、骨の新生や吸収を司っている。また、骨芽細胞は類骨組織を形成し骨塩が沈着すると骨細胞に変わる。破骨細胞は古い骨を取り除く食細胞として働く他、ホルモン作用を受けて血清カルシウム調整に関与する。

  U.細胞外基質

   骨有機基質があり、主な構成成分ではコラーゲン線維と線維間に存在する蛋白多糖体があり90〜96%はコラーゲンが占めている。

   もう一つは骨無機質で骨の特徴である硬さは線維性有機質にミネラルが沈着しているからである。このミネラルの主成分はCa、燐酸、炭酸、クエン酸イオンである。

 

  V.骨の構造

   一般的に骨は外層から外骨膜、皮質骨、海綿骨、内骨膜からなり、骨幹部では骨髄腔が中央に存在している。骨組織のいずれもその力学的要請により合目的に構築され、常にremodeling(再造形)されている。

  1, 緻密骨(皮質骨)compact bone (cortical bone)

      長管骨を輪切りにすると、その断面は厚みのある管状で肉眼的に全く間隙が見えない硬い骨のことを言う。

  2, 海綿骨 cancellous or trabecular bone

    小児の一次骨核、二次骨核、成人の骨端、骨幹部、扁平骨、短骨、骨折の新しい仮骨、病的新生骨などにみられる。海綿状というよりむしろ蜂の巣のような構造をしている。

    また、骨端成長軟骨の石灰化層で細胞が死滅し血管が侵入してきて軟骨石灰化基質そのもので作られたものを一次骨梁といい、これが改変されて骨幹側に作られたものを二次骨梁と呼んでいる。

  3, 未熟骨 woven bone (=粗線維骨)

   未熟な骨や病的に形成された骨であり、骨細胞は大きな骨小腔をもち基質に対して細胞成分に富み未石灰化基質が多い点が特徴的である。

  4, 骨膜 periosteum

   骨の外周を覆う骨膜(外骨膜)と骨髄側の内骨膜に分けられる。

   骨膜は膜様構造を示す結合組織で外層はコラーゲン線維と線維芽細胞よりなり骨形成能はないが内層には前駆細胞と骨芽細胞が存在しており成長期では骨の横径の成長が営まれる。

   内骨膜は網状細胞の薄い層で骨髄腔やHavers管の内張りをするように存在する。これらも骨膜と同様 骨形成能があり骨折などで活性化される。

  5, 骨髄 bone marrow

   成人の骨髄は赤色髄red marrow、黄色髄yellow marrowにわけられる。赤色髄は各形成段階の赤血球の存在により、また黄色髄は脂肪組織によりその色調が異なる。

   生下時の骨髄は全て赤色髄(造血組織)であって、次第に四肢末端骨より頭蓋、脊椎、骨盤骨へと対軸に向かって左右対称に造血組織が脂肪組織へと変換が進行し、25才までに赤色髄は対軸骨と大腿骨、上腕骨の近位骨幹端に限局し他は黄色髄に変わる。黄色髄でも造血機能は残り必要に応じて赤血球産生を行う。但し骨端は造血に関与しない。

 

  W.骨の種類

  1, 長管骨 long bones (四肢骨)

@  骨端 epiphysis:海綿骨より形成されその上に関節軟骨板を有している。

A  成長軟骨板 epiphyseal growth plate:成長期のもので骨端と骨幹の間にあり長軸の成長を行っている。

  予備石灰化層 zone of provisional calcification:一次骨ができる部分

B  骨幹端 metaphysis:内軟骨性骨化により骨化がおこる部分

C  骨幹 diaphysis:緻密骨により形成された円筒状の骨で骨髄腔を有している。

, 扁平骨 flat bones

   頭蓋骨や肩甲骨にみられる扁平な骨で内板外板にはさまれた海綿骨である。

  3, 短骨 small bones

   手根骨、足根骨に代表される短小な骨で関節軟骨以外の部は薄い緻密骨で囲まれた海綿骨よりなる。

  4, 種子骨 sesamoid bone (膝蓋骨も含まれる)

   足や手などにみられる球状の小さな骨で腱靭帯付着部にある短骨の一種。

   また、特定の骨に所属していて骨化過程で癒合せず分離した形で存在するものを

   豆骨ossiclesと呼び種子骨とは区別する。

 

  X, 骨の血管

   長菅骨では主に3種類の血行より栄養される。

1.    骨幹部の骨皮質を貫通する栄養血管系

2.    骨端骨幹端血管系

3.    骨膜血管系

    栄養動脈は骨髄および内骨膜に広く分布し、骨皮質のHavers菅と骨膜動脈とも吻合する。また、栄養動脈は骨幹部70%、骨端・骨幹端で33%の血液供給をうけもつ。

    骨端動脈のほとんどが静脈洞を通して静脈系に移行して中心静脈洞、細静脈をへて骨外に出る。皮質骨の1/3は骨膜動脈から、残り2/3を栄養動脈系から栄養されている。

 

  Y, 骨の神経支配

   骨に分布する神経は骨髄神経と骨膜に分布するものに大別される。

   骨髄神経は栄養動脈と同様に骨皮質を貫通して骨髄腔、内骨膜に広く分布する。

骨膜神経は骨膜血管と同様にきわめて豊富にみられ、一部はHavers管内にも入る。

知覚線維と血管運動神経が主で特に痛覚は他の組織に比べて鋭敏である。

   最後に、長管骨はその成長に関して、骨端、成長軟骨層または成長板、骨幹端および骨幹に区分される。この区分を正しく知ることは、疾患の発生にかなりの部位特異性がある点から、またX線所見の正しい部位記載を行うためにも大切であると思われる。

なお、原発性骨腫瘍は長管骨に圧倒的に多い。とりわけ骨幹端部が侵されるが、主な腫瘍についての部位分布を上図に示してみた。

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