ヘリカルＣＴにおける至適タイミングの検討

中山記念病院　��橋 保幸　

　肝を中心とした上腹部のダイナミックＣＴにおいて、造影剤の到達時間の個人差により的確な動脈優位相を得ることが難しく、時としてPhase troubleが起きている。

　そこで、ダイナミックＣＴを施行した１０４例を対象として、肝と同じレベルの腹部大動脈のＣＴ値を計測し、時間濃度曲線を作成し真の到達時間を求めた。

　次に、体表面積、バイタルサインとの相関性の有無を調べ、適切なDelay Time（Td）を事前に知ることのできる簡易計算式を考案することを試みた。

　　　

　図に示すように、造影剤が目的臓器において、最高濃度を達成する時間は、注入時間（V/R）と到達時間（Ta）に左右される。スキャンタイミングは最高濃度を達成した時間を必ず中央に置く必要があるので、これらを数式化するとDelay Time（Td）を求める計算式が

Td=V/R + Ta – Ts/2として成立することになる。

この式より、事前に知りえない数値が造影剤の到達時間（Ta）であることが解る。そこで、あらゆる因子と到達時間の相関性の有無を調べた結果、脈拍と脈圧にのみ関係することがわかった。さらに、詳細に検討を続けると、それぞれ単独での相関性よりも、脈拍と脈圧の積の逆数の方が相関性がより高まることが解った。

　当初、この計算式にて臨床に用いていたが、実際の到達時間との誤差が約3.5秒ほど認められ、ＭＤＣＴには充分な対応ができないと考え、再検討することとした。

　再検討の結果、唯一性別に関して検討を行っていないことに気づき、男女別にて再度回帰分析を行った処、さらに良好な結果が得られ、誤差を1.5秒程度に短縮することができた。

　しかしながら、当該計算式が有効でない場合が時折発生することがあり、経験学的に若干の注意点が存在することに気づいたので、以下に列挙する。

　◎　静脈針の刺入位置を手背静脈に選ぶと、到達時間が遅れるので注意が必要である。

　◎　スキャン開始のアナウンスを用いた場合、その時間をTdから減算しなければならない。

　◎　脱水の強い被検者の場合、造影剤の注入で血圧が低下し、到達時間が遅れがちとなる。

　以上３点が、代表的な注意点であるが、その他不整脈を持つ被検者にも不適応であることは言うまでも無い。

　以上で、簡単にTd計算式の有効性について記述したが詳細については、日技会誌の４６巻１２号及び、４８巻７号を参考にしていただきたい。　　　　　以上

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