日本医師会編「X線CTのABC」を読む 

立花外科病院 矢野雅昭

 

 放射線技師に必要不可欠と考えられるCT画像読影” self assessmentテストという形で自己評価してみたいと考え、日本医師会編の「X線CTのABC」を教材に選んだ。

 平成12年度の診療放射線技師今治木曜会定期勉強会において、

1回:6月8日・第2回:6月29日・第3回:9月7日・第4回:9月21日・

5回:10月5日・第6回:11月9日 の計6回、講義した内容をもとに、

もう一度「X線CTのABC」を読み返してみたいと考える。

 過去の技師研修会の《フレッシャーズセミナー》においても、

胸部CT画像読影については、気管支と肺区域や肺動静脈と縦隔・リンパ節の同定を

頭部CT画像読影については、脳葉の分割と支配するそれぞれの脳血管を中心とした脳解剖を

腹部CT画像読影については、各々の臓器や大血管について、又、肝臓での肝区域の同定 

などが正常解剖の理解という形で講義されてきた。

この正常を理解することは異常影をポイントアウトするうえでの第一条件となってくる。

ひとつの病理病態を理解したうえで、一枚のCT画像から、

@  病変の局在診断

  A異常吸収値吸収域

B構造の異常

C造影による濃度および増強形態の変化などなどを

チェックしていきたい。

漫画本を読むように

この「X線CTのABC」を

読んで欲しい 理解して欲しい!

 

“知ってなきゃ 異常を指摘できないよ!”

 

 

例えば 脳神経外科領域 を

基礎となるこれらの本を漫画本を読むように読んで欲しい!

 

 

肝区域を同定しよう!

H型裂溝でまず肝臓を分割

解剖1・・・肝の解剖は表面の裂溝および内部の血管系から成される。肝の前上面は無構造であるが、下背面(内臓面)にはつぎの構造を認める。

@  肝門:左葉内側区S4と尾状葉S1の間隙で、門脈、肝動脈、胆管の出入り口である。

A  肝円索裂FLT:肝円索(胎生期の臍静脈)およびこの頭側に張る肝鎌状間膜および門脈左主枝を擁し、外側区S2 S3と内側区S4を境する。

B  静脈索裂FLV:胎生期の静脈管の走っていた間隙で尾状葉S!と外側背側(後)区S2の境界。

C  下大静脈溝と胆嚢窩(床):この2つを結ぶ線をCANTLIE線と呼び、外科的な左葉と右葉の境界。

解剖2・・・門脈portal vein と肝静脈 hepatic vein

 肝の血管系の基本は、各(亜)区域の中央を門脈が、区域の間を肝静脈が走行する。

 

門脈

門脈本幹MPVは右葉左葉主枝に分岐する。左葉枝は肝円索裂に入り、すぐに左方へ外側背側(後)亜区域枝P2を出し、さらに腹側へ伸びて左右に外側腹側(前)亜区域枝P3と内側区域枝P4に分かれる。ここが臍点 umbilical point(U点)と呼ばれる。右葉枝はまず前区域枝と後区域枝に分かれる。前区域枝は右上方に直進するが、そのまま伸びるのが前上亜区域枝P8で、前下方に分岐するのが前下亜区域枝P5である。後区域枝は背側へ走る。後区域枝後上方枝P7 後下方枝P6分岐部は血管造影上on-endに認められP点と呼ばれる。

尚、肝内においては、肝動脈と胆管が門脈と並走(glisson鞘)する。

肝静脈

区域の間を走る肝静脈で区域を分割し同定する。肝静脈は左・中・右の三本を基本とする。左肝静脈外側枝、左葉外側区の中央(背側後区域S2と腹側前区域S3の間)を走り両亜区からの血流を集め、さらに左肝静脈内側枝外側区と内側区S4の間を走り内側区からの分枝と合流する(左肝静脈本幹)。中肝静脈本幹は、内側区と右葉前区の間を走り、両区の血流を集める。おおよそ CANTLIE線とほぼ同一面にある。また右肝静脈本幹は、右葉の中央を貫き、前区と後区に分割する。

肝区域

 

肝の解剖3・・・COUINAUDの区域分類

COUINAUDは肝内臓面からみて、尾状葉を中心に反時計回りに各(亜)区域に番号をつけた。そして内臓面から全くみえない前上亜区を区域8とした。

S1:尾状葉・・・腹側に門脈を擁する肝門を隔てて内側区S4と、その左に静脈索裂を隔てて外側区と対向する。尾状葉の右背側に下大静脈がある。尾状葉の血管支配は他区域と異なる。すなわち肝動脈、門脈は左右両葉枝あるいは本幹から入り込み、肝静脈は独自に下大静脈に抜ける経路を有する。このため血行動態的に特殊な位置を占めるといえる。

S2 S3:左葉外側区・・・左葉外側区は、右は肝円索裂を隔てて内側区と右背面は静脈索裂を隔てて尾状葉と対向する。外側区の中央を左肝静脈外側枝が貫き、その背側、腹側をそれぞれ、S2左葉外側背側後区域、S3左葉外側腹側前区域とする。

S4:左葉内側区・・・左は肝円索裂を隔てて外側区(S2 S3)と、背面は肝門を隔てて尾状葉(S1)と対向する。右はCANTLIE線で右葉と境される。胆嚢床と中肝静脈をこの境界の目安とする。

S8 S5:右葉前区域 S7 S6:右葉後区域・・・肝右葉表面には、溝や裂が皆無で外観から各(亜)区を区別できない。前区と後区は、右肝静脈で区別する。しかし、上下の亜区は、その中央を走る門脈を肝門部から追跡しておよその範囲を決めるにとどまる。注意すべきは、@S8は高い部位にあり横隔膜直下の大部分を占める。AS7の門脈枝は通常背側へ水平に向かう、したがってS7は肝門の真後ろに位置するとともにS1尾状葉と連なる。B肝の最下部はS6である。という点であり、右葉の上下亜区の境界を示す構造はない。右肝静脈は、腹外尾側から背内頭側の下大静脈へ走行している。

肝区域を憶えよう! 簡単ですよ!

                  

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