膝関節疾患のMRIについて

立花病院 伊藤 薫 

 近年、MR画像の進歩は著しく腹部臓器に比べartifactの少ない整形外科領域へのMRIの応用は広くなされており、特に膝関節疾患においては診断上 非常に高い評価が得られている。従来では、膝関節の検査としては関節腔内へ造影剤を注入する関節造影やCTおよび関節鏡であるがいずれも侵襲的な検査法であり、これに反してMRIは非侵襲的でX線被爆がないことや任意の断面が得られることコントラスト分解能が優れていることより関節を構成する靭帯、半月板、関節軟骨及び骨髄腔などの状態を把握するのに非常に有用な検査法である。今回は、この膝関節疾患におけるMRIについて報告する。

膝関節のMRI撮像に関しては、各施設で異なっており決まったものはないが当院で行っている撮像法について述べると、装置は日立の0.3T permanent magnet Wide Open型エアリスUを使用しコイルは膝専用のQDコイル、撮像体位は仰臥位で下肢を約10-20度外旋 また、前十字靭帯を観察するために膝をコイル内にできるだけ屈曲させた状態で検査を行っている。

                                                                   

つぎに膝関節のシェ−マをまじえて正常解剖についてのべると膝関節は最も複雑な構造と機能を持つ関節で広範囲の屈伸運動とともに安定性を要求され、人体の中で最大の荷動関節である。基本的には、大腿骨と脛骨との間の関節でいずれも硝子軟骨で覆われている。また、膝関節の安定性は関節包,靭帯,筋腱などの総合的な作用によって保たれている。外側側面像から見たシェーマで示すように膝関節外側の靭帯の構成は、腸脛靭帯,外側側副靭帯,大腿二頭筋腱,膝窩筋腱などからなる。外側側副靭帯は、膝窩筋腱部の真上で大腿骨外側顆外縁より発し後下方に下がり大腿二頭筋腱と合流して腓骨頭に付着する。後面像から見たシェーマより膝関節内側を補強する靭帯として、内側側副靭帯があり幅広く薄い帯状のもので大腿骨の内側顆と脛骨内側面をつないでいる。この靭帯は、浅層と深層の2つから成り深層は内側半月板に強固に結合している。

関節内で膝関節補強に役立っている靭帯として2本の強力な十字靭帯が関節内で交叉するように形成されている。1つは前十字靭帯で大腿骨の外側顆内側後部から前内方斜めに下降し脛骨の前顆間区に付着する。もう1つの後十字靭帯は大腿骨の内側顆外側前部から後外側方に下降し脛骨の後顆間区に付着する。なお、前十字靭帯と後十字靭帯とともに関節内にあるが、実際は滑膜で覆われているため関節外に相当する。また前十字靭帯は大腿骨に対する脛骨の前方への滑り出しを後十字靭帯は後方への滑り出しを阻止する役割を持っている。また、半月板はC字形状の線維性軟骨から成り辺縁部は厚く関節包に付着するのに対してその内方部は薄く自由縁を形成する。このため半月板の切断面は三角形を呈している。内側半月板は三日月状を示すが前方端に比べて後方端の方が幅が広い。また前方端は脛骨の前顆間区に付着し横靭帯と呼ばれる細い線維束により外側半月板と結ばれる。後方端は脛骨の後顆間区に付着する。

外側半月板は比較的均一な幅の広さを持ち前方端は脛骨の顆間隆起の直前に後方端は後方端は顆間隆起の直後に付着。外側半月板後方端から小線維束(Wrisberg靭帯)が出て後十字靭帯に沿って大腿骨の内側顆まで達する。外側半月板辺縁部は膝関節の外側側副靭帯から膝窩筋腱により隔てられている。また、半月板の役割として大腿骨と脛骨との関節接触面の安定性を高め関節面に加わる衝撃力を分散および吸収する機能を持っている。

つぎに、MRIでよく遭遇する膝関節疾患の症例の中で今回は、半月板断裂の一種で特殊なタイプとしてバケツ柄状断裂の症例を報告する。所見の特徴して、半月板に前後方向に縦断裂が生じバケツ柄に相当するcentral fragmentがそれ以外のperipheral fragmentから分離し大腿骨顆間窩の方へと移動していく。下図に示すように冠状断では内側半月板が外側半月板に比べ小さく矢印で示すように断裂片が脛骨の中央部付近に移動を認める。また、矢状断では後十字靭帯の近傍に移動した断裂片が一見 後十字靭帯が二本あるかのような形態として描出されるのが特徴である。

        

なお、今回は膝関節の正常解剖について大半を考えてみた。次回はMRでよく遭遇する膝関節疾患の特徴を述べることにする。

以上

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