MRAにおける偽陽性所見の検討
The examination of the false positive view in MRA
愛媛県立新居浜病院 三宅宣雅
(はじめに)
MRA(TOF-MRA)は造影剤を使用することなく頭部の血管を描出できるすぐれた技法であり、頭頚部血管の画像診断の第一選択になります。しかし精密検査という意味では、空間分解能や乱流、渦流の影響を受けやすいなどまだまだ問題が多いのが現状です。
当院では主にMRA検査において所見がある場合において 3D-CTAで精査して成果をあげています。
MRAで所見があるにもかかわらず3D-CTA上は所見がなかった症例について双方比較しMRAの特徴と適応に関して検討しました。
(検査の内訳)
頭蓋内の精査が最も多く3D検査全体(total330件)に対して199件と約60%を占めています。
頭部、頚部両者ともMRA後の精査目的で3D−CTAを撮る場合がほとんどです。
Fig1に示す3D−CTAにおける有病率ですが、頭部、頚部とも6割で所見を認め、残りの4割では有意な所見が得られていません。これらの4割の偽陽性症例について検討しました。
Fig.1
(使用機器及び撮像方法)
MRA Philips Gyroscan ACS-U 1.5T
Brain MRA technique 3D-TOF
TR 27msec TE6.9〜7.1msec
Flip angle 15°
Slab thickness 60mm
NSA×2 Scan matrix 256
Flow compensation(+) total scan time6分13秒
Neck MRA technique 2D-TOF
TR 25msec TE7.3msec
Flip angle 45°
Slice厚 3.6mm Slice gap -1.5mm total36slice
NSA×2 Scan matrix 256
Flow compensation(+) total scan time3分16秒
3D-CTA CT 東芝 Xvision/GX
ワークステーション Xtension
Brain CTA 管電圧120kv 管電流150mA
スライス厚 1mm
寝台移動速度 1mm〜1.5mm/rot(sec)
補間処理 180°対向補間
画像再構成間隔 0.5mm
造影剤 イオパミロン300
Neck CTA 管電圧130kv 管電流100mA
スライス厚 2mm
寝台移動速度 2〜2.5mm/rot(sec)
補間処理 180°対向補間
画像再構成間隔 0.8mm
造影剤 イオパミロン300シリンジ
息止め有り
(症例)
MRA上で狭窄、動脈瘤様の所見を呈し3D−CTA上で有意な所見の無かった症例を提示。
(考察)
MRA上画像に影響を及ぼす流れの形態には次のようなものがあります。
・ 乱流(Tubulence flow)
・ 流れの淀み(Recirculation flow)
・ 弾性流体(Plug flow)
・ 非弾性(粘性)流体の層流(Laminar flow)
MRAは血管の形態再現性において血管内の流速の違いや乱流の影響を受けやすく、
空間分解能も考慮すると形態再現性に乏しいものがある。また分解能の高い画像を得ようとすると検査時間の延長等患者様に負担がかかってしまいます。
現時点ではMRAはスクリーニングで、より詳細な情報を得る為には3D-CTAで行うべきであり、正診率の向上を考えると頭部血管検査において3D-CTAにおけるDouble checkは必須であると考えます。