腹部ＵＳの実際と解剖

救急外来での超音波検査のコツ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＶＯＬ.３　　��橋 保幸

ＵＳは外来におけるファ−ストチョイスであると同時に、その優れた組織分解能により、時として確定診断さえもなし得る能力を持っている。さらに、その簡便さと即時性によりＵＳの活躍の場は多岐にわたっている。その利点を最も生かしているのが救急外来である。そこで今回、救急外来でのＵＳ検査のコツについて述べることとする。

　さて、救急外来を訪れる原因として大きく外因性と内因性に分けることができる。問題は内因性のもので、原因が明らかでない場合が多く、中でも多いのが不明熱による意識障害であり、時として、心不全を合併し、死に至る場合がある。この様な場合、充分な検査ができないことが多く、診断が遅れることがまれにある。しかし、簡便で検索能に優れているＵＳを用いることで、速やかに診断を確定し、適切な治療へと進める為、ＵＳは救急外来での最適なモダリティでもあると言える。

　ＵＳといえば、肝胆膵に代表されるが、これに固執していたのでは救急外来での対応は不適切となってしまう。つまり、救急外来での最も優先すべき検出対象は異常な液体の貯留なのである。それは、胸水及び、腹水であり、さらに消化管内の液体の大量貯留である。

実は、これらを一度に観察することのできる走査部位が一箇所だけある。それが左季肋部の肋間走査である。

　　　　

　正常では脾臓のみしか見えないが、チルティングによってその足方に左腎と後腹膜腔が見えてくる。胸水（ＰＥ）は脾臓の頭方に現れ、肺疾患の存在を疑える。腹水（ＡＳ）は脾臓の足方に現れ、腹腔内の浸出液、漏出液または、出血巣の存在を示唆している。さらに、消化管内の大量の液体の貯留は、消化管の炎症及び、絞扼、穿孔を疑わせる所見を呈することになる。

　　　

　しかし、脾病変自体が本来少なく、一般に軽視されがちな部位となっているが、実は救急外来において、ここは情報量の最も多い走査位置なのである。

　　　　　　　　　　「 エコ−は液体に始まり、液体に終わる 」

この迷言が名言になる日を思いつつ、本稿を終えることとします。

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